研究実績の概要 |
今年度は,秘密分散型のネットワークを用いて放送型暗号が実現できるかを議論し,既存の放送型暗号の鍵長を大きく削減する放送型暗号が構成できることを示した. 具体的に例えば,100人以下の任意のグループに対して鍵が配送でき,3人以下の結託に対して安全な放送型暗号((≦100, ≦3)-one time secure 放送型暗号)を考える.これを従来の最適な放送型暗号で実現する場合,5GBのデータを送るために約834TBの暗号化鍵,809TBの復号鍵が必要であったが,(5,3)型組み合わせネットワーク(ソースが5個の中間ノードにノイズのない通信路で接続され,各ユーザがそれぞれ3つの中間ノードと接続されているネットワーク)に対して符号化を行うと,暗号化鍵2.6TB,復号鍵75GBで放送型暗号が実現できることを示した.このように,単純な放送型通信路を用いるより,ネットワークの特性を活かすことで情報理論的安全性を達成しつつ,比較的現実的な鍵サイズで放送型暗号が実現できることが明らかに出来た.この意味で,当初の研究計画は概ね達成できたといえる.特に,組み合わせネットワークでは従来(最適な構成法であっても)非現実的だと思われていた放送型暗号が現実的なレベルで構成できることを明らかにしたことは理論的にも実用的にも意味があると考えられる. 組み合わせネットワーク以外の一般的なネットワークに対する一般化や提案手法の最適性証明など,今後の課題も存在するため,今後も研究を進める予定である. また,本研究に関連して,秘密分散法やマルチパーティ計算に関する成果も幾つか得られた.
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