研究課題/領域番号 |
26420347
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
村松 正吾 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (30295472)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 冗長変換 / スパース表現 / ボリュームデータ復元 / 辞書学習 / 実時間実装 / タイトフレーム / 画像処理 / 組込みビジョン |
研究実績の概要 |
本研究では、非分離冗長重複変換の設計、実現および信号復元応用について検討している。平成26年度は特に、事例に基づく辞書学習、三次元拡張について検討を行った。 非分離冗長重複変換は、先に我々が提案した二次元画像に対する冗長変換で、対称性と重複性を有する水平垂直不可分な要素画像により構成される。本変換は任意の有理数の冗長度を選択できる上、エネルギー保存制約を構造的に与えられる利点をもつ。組込みビジョン時代を迎え、画像センシング環境は多様化している。また、超並列計算時代を迎え、高次元信号処理の普及も必然である。このようは背景から、高次元信号のノイズ除去、超解像、欠損修復等を効率的に実現できる信号復元技術について、その可能性を明らかにする本研究の成果の意義は大きい。 具体的な成果を以下にまとめる。まず、顔画像を事例とした辞書学習により非分離冗長重複変換の設計を行った。この事例に基づく設計辞書を画像復元問題に適用し、その有効性を確認した。また、三次元へと構成を拡張し、MRIデータを事例として辞書学習を行い、三次元非分離冗長変換の設計を行った。設計した三次元辞書でMRIデータの非線形近似を行い、構造的辞書学習法として知られている三次元スパースK-SVDの結果と比較して、提案手法の有効性を確認した。 これら研究成果について、音響音声信号処理に関する国際会議(ICASSP2014)や信号処理シンポジウムなど国内外の学会にて積極的に発表を行い、広く情報を発信すると共に、今後の発展に有益な情報の収集を行った。また、世界中の科学者、開発者に広く利用されているMathworks社の数値シミュレーターMATLAB/Simulinkにて提案法の設計や応用のプログラムを構築し、これらを同社が運営するサイト上にて公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の当初計画は、非分離冗長重複変換の事例に基づく設計の検討と画像復元応用を行う予定であった。また、同変換の実時間実現のための組込み実装および超並列実装への準備も開始する予定であった。 物品購入、成果発表なども含め概ねこの研究計画のとおりに進んでいる。さらに、同変換の三次元拡張など計画以上に進展した部分もある。このことから組込み実装よりも超並列実装の準備を優先的に進めた。GPGPUを搭載した計算機を購入し、提案する二次元変換の周波数領域での処理を実装し、速度の大幅な向上が見込める結果を得た。 さらに、画像、ボリュームデータ共に、非分離冗長重複変換が既存技術であるスパースK-SVDと同等あるいは高い信号近似性能を示すことを確認した。設計法および画像復元の研究成果を学術論文誌へ投稿する予定であったが、三次元以上の一般的な多次元変換としての理論を優先して整理することが必要と判断したため、理論と設計のみに関する論文投稿を行い、これに留まった。 多次元変換としての非分離冗長重複変換は、冗長度の設定の自由度が高く、従来の構成法に比べて低い冗長度で高い画像復元、ボリュームデータ復元性能を示すことが確認されている。今後、研究を発展させるための基礎的な検討について十分に行えた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策を設計、応用、実現に分けて以下に述べる。 1.設計:平成26年度の成果として、提案変換の事例に基づく学習設計が可能であることを示すことができた。ただし、計算時間の問題やノイズ除去、超解像などそれぞれの応用に特化した設計の問題について検討の余地が残されている。今後は、設計の効率化による計算時間の短縮や応用毎の設計手法について提案と評価、改善を進める予定である。 2.応用:平成26年度は、二次元の画像から三次元のボリュームデータも対象とできるよう理論を拡張した。しかしながら、対象となる具体的なボリュームデータは医療画像をはじめ、光線場画像やハイパースペクトル画像など多岐に渡り、これら多くの対象について検討の余地が残されている。平成27年度は、具体的なボリュームデータや応用への展開のほか、個々の問題に適した設計や復元処理の検討を進める予定である。 3.実現:平成26年度は、超並列実装の基礎的な検討として周波数領域処理のGPGPU実装を開始した。ただし、非分離冗長変換の対称性や局所性といった特徴が考慮されていない。今後は、同変換の特徴を生かした高速化や効率化について検討し、再利用し易いモジュールやライブラリ等の整備をさらに進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた国際会議への参加回数を2回から1回に変えて他の費用に充て、一部を学術論文投稿の準備費用とした。しかしながら、論文をよりインパクトの強い内容となるよう見直し、時間を要したため平成26年度内に準備を終えることができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度内に同学術論文の投稿を行うため、平成26年度の助成金をその英文校正費用の一部に充てる予定である。
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