本研究では、非分離冗長重複変換の設計、実現および信号復元応用について検討を行った。平成28年度は特に、離散フーリエ変換領域実現とそのGPGPU実装、ストリーミング処理実現とそのFPGA実装、および複素画像対応を実施した。 非分離冗長重複変換は、我々が提案している多次元信号に対する冗長変換で、対称性と重複性を有する水平垂直不可分な要素画像により構成される。本変換は任意の有理数の冗長度を選択できる上、エネルギー保存制約を構造的に与えられる利点をもつ。IoT時代を迎え、信号センシング環境は多様化している。また、大規模計算時代を迎え、高次元信号処理の普及も必然である。このような背景から、高次元信号のノイズ除去、超解像、欠損修復等を効率的に実現できる信号復元技術について、その可能性を明らかにする本研究の意義は大きい。 平成28年度の具体的な成果を以下にまとめる。まず、離散フーリエ変換領域での多重解像度解析実現法を提案し、GPGPU上での高速実装を行った。多次元フィルタリングと標本化格子変換を周波数領域での要素毎の演算に帰着させ、GPGPUでの高並列実装を可能とした。また、映像信号に対する分析合成処理の実時間実現を目的とし、FPGA上でのストリーミング実装を行った。他にも、複素画像に対応した非分離冗長重複変換の理論と設計について検討を開始した。 前年度および今年度の研究成果について、画像処理に関する国際会議(ICIP2016)やアジア太平洋信号情報処理学会年次大会(APSIPA ASC2016)のほか、信号処理シンポジウムなど国内外の学会にて積極的に発表を行い、広く情報を発信すると共に、今後の発展に有効な情報の収集を行った。また、非分離冗長重複変換の理論と設計に関して学術論文(IEEE Trans. on Signal Process.)にまとめた。
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