研究課題
平成29年度は前年度までの成果をさらに精緻にするため、復号遅延が制限された複数の符号木を用いた符号の探索について確認をおこなった。前年度までの研究では精度の低い算術符号と準瞬時可変長符号の関係を調べた。二つの符号は入力シンボルに応じて状態遷移するオートマトンとみなすことができる。演算精度の低い算術符号から導かれたオートマトンの各状態の符号を見ると語頭条件を満たさないことが確認された。これらのことから二つの符号は多くの共通点を持つことが分かり、さらに両者が本質的に同じ符号木で表せる場合があることが分かった。したがって最適な算術符号と最適な準瞬時可変長符号は本質的に同一の符号となる場合がある可能性が高い。このことから、最適な準瞬時可変長符号を探索する問題に取り組んだ。準瞬時可変長符号は複数の符号木を用いることによってハフマン符号よりも小さい符号化レートを達成できる符号として知られており、最適な準瞬時可変長符号は整数計画法を用いることで見つけられることが知られている。一方、符号語が互いに語頭・語尾にならないリバーシブル可変長符号の最適符号を探索する方法としてA*アルゴリズムを応用することが提案されている。本研究ではA*アルゴリズムを別の形で応用して最適な準瞬時可変長符号を探索する方法を確立した。最適な符号を見つけるためには最適な二つの符号木を見つける必要があるが、各符号木は情報源シンボルに順番に符号語を割り当てることによって符号を構成していく。割り当てる符号語は単に符号シンボルの列だけでなく語頭条件を満たすのか否かという付加情報を加えることによって特徴付けられる。このアルゴリズムでは、探索の過程で最初に発見した符号が最適符号であることが保証される。すなわち、さらに探索を続けても2番目以降に見つかる符号は最初に見つけた符号の性能を超えられないことを理論的に証明した。
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IEICE Transactions on Fundamentals of Electronics, Communications and Computer Sciences
巻: E100-A ページ: 2641-2646