研究課題/領域番号 |
26420354
|
研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
石橋 豊 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40252308)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 遠隔ロボット制御 / 力覚フィードバック / 自由視点ビデオ / 視点変更 / 臨場感通信 / QoS制御 / 安定化制御 / QoE評価 |
研究実績の概要 |
自由視点ビデオを見ながら触覚インタフェース装置を用いて遠隔の産業用ロボットを操作できるように実験システムを構築した。実験システムでは、簡単のためカメラの数を1とし、ネットワークの代わりにネットワークエミュレータを用いた。そして、今年度は、金属棒を穴に入れる作業、鉛筆・ボールペン・毛筆で文字を書く作業を対象とし、以下の検討を行った。 (1)産業用ロボットに取り付けられた力覚センサーからの力情報を触覚インタフェース装置にどのように出力するか(最大反力の違いの吸収方法)、また両者の作業空間の大きさの違いをどのように吸収するかについて検討した。その結果、最大反力と作業空間の大きさのマッピング比率は作業内容に依存することが判明した。 (2)ネットワークエミュレータによって、ネットワーク遅延を擬似的に発生させて実験を行い、ネットワーク遅延がシステムの安定性や操作性に与える影響を調査した。その結果、産業用ロボットの操作をある一定以上の速度で行うと、安定性が失われることが判明した。また、ネットワーク遅延の増加に伴い、操作性が大きく劣化することが判明した。操作性の劣化を抑えるためのサービス品質(QoS: Quality of Service)制御として、研究代表者らが以前に提案した反力の適応制御を適用し、その効果が大きいことをユーザ体感品質(QoE: Quality of Experience)評価によって定量的に示した。 (3)自由視点ビデオの伝送方式として、研究代表らがこれまでに提案した合成画像伝送方式と画像・奥行画像伝送方式に対して、ネットワーク遅延に応じて伝送方式を切り替える制御を提案した。そして、QoE評価によって、その有効性を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
金属棒を穴に入れる作業と文字を書く作業は、当初の計画では平成26年度、27年度に行う予定であったが、平成26年度中に、誰が作業しても簡単に金属棒を穴に入れられるようになったこと、当初の目標値であった20ポイント程度の大きさの文字を書くことができるようになったことから、この点に関しては大きく研究が進展した。これは、主に反力の適応制御と、反力と作業空間のマッピングが予想以上に効果的であったからである。 しかし、文字を書く作業の場合には、触覚インタフェース装置の操作性にまだ改善の余地があることが判明した。また、産業用ロボットの納入に時間を要したことにより、安定化制御として、スキャッタリングマトリックスに対してウェーブフィルタと位相補償器を用いる手法の実装を行う時間がなかったため、ロボットを操作する速度などをある一定値以下になるようにして安定な状況の下で研究を進めた。また、自由視点ビデオで視点を移動したときの画像品質の劣化が大きく、カメラを複数にして、さらに高画質化が必要であることが分かった。 以上より、進んでいるところもいくつかあるが、大きく遅れているところもあるので、全体としては、やや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度は実験システムの構築に時間を要したため、並行して多くの研究項目に取り組むことが難しかったが、システムの基本部の構築が完成したので、今後は、複数の大学院生に同時にいくつかの研究項目に取り組むことが可能になり、これまでの遅れを取り戻す予定である。また、学外の連携研究者(特に、豊橋技術科学大学の三好孝典准教授、東京理科大学の黄平国助教)との連絡を密にして、遅れている安定化制御と、QoS制御の融合の研究を推進していく。さらに、学内の連携研究者の福嶋慶繁助教が4月1日に准教授に昇任し、研究指導学生数が増加したので、遅れている自由視点ビデオまわりの研究の進捗も早めることが可能である。
|