一人の利用者がビデオを見ながら触覚インタフェース装置を用いて遠隔の産業用ロボットを操作する遠隔ロボットシステムを対象とし、QoS制御と安定化制御の融合を図った。作業として、金属棒を穴に入れる作業、ボールペンで20ポイント程度の大きさの文字を書く作業だけでなく、針の穴に糸を通す作業を扱った。主な検討内容を以下に示す。 (1) 遠隔ロボットシステムにおけるバイラテラル制御の安定化のために、研究分担者の三好が提案してきた、ウェーブフィルタに位相制御フィルタを組み合わせて用いる手法を適用し、実験によりその効果を確認した。 (2) 力覚メディアのサービス品質(QoS: Quality of Service)制御として、研究代表者らが提案してきたSkipping制御を適用し、上記の安定化制御とQoS制御の融合を実現した。 (3) 安定化制御のために、ネットワーク遅延やその揺らぎに応じて最適な粘性係数が存在することを明らかにし、粘性の適応制御を新たに提案した。 (4) 針の穴に糸を通す作業に対して、カメラ角度、作業空拳のマッピング比率、ネットワーク遅延が作業効率に及ぼす影響を調査した。 (5) 触覚インタフェース装置を用いた重さや形状の知覚を調査するため、三次元仮想空間内にある重りを二人の利用者が一緒に持ち上げる、重さ知覚バランスシステムと、仮想オブジェクト識別ゲームを作成し、ネットワーク遅延の影響などを明らかにした。また、QoS制御としてローカルラグ制御を用いれば、ネットワーク遅延にほぼ関わらず、バランスさせながら作業が可能であることが判明した。重さ知覚バランスシステムでは、オブジェクトとして、サウンドや香りを有するものを扱い、触力覚、聴覚、嗅覚の効果を比較した。
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