研究課題/領域番号 |
26420355
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
岡本 英二 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10358963)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | カオス通信 / MIMO / 物理層秘匿性 / 符号化利得 / ターボ原理 / EXIT解析 / Box-Muller法 / 最大事後確率復号 |
研究実績の概要 |
カオスMIMO(multiple-input multiple-output)伝送手法は,カオス変調に基づくガウス信号伝送により物理層秘匿性と通信路符号化機能を持たせることのできる伝送方式である. 昨年度よりカオスMIMOに対数尤度比(log likelihood ratio: LLR)を導入して軟値復調を行い,外部符号とLLRを交換しつつターボ繰り返し復号を行うターボ符号化カオスMIMO手法を検討していたが,その繰り返し復号改善効果を理論づけるEXITチャート解析という手法を新たに適用した.そしてカオスMIMO伝送手法にターボ符号化が効果的であることを理論的に示した.このターボ符号化について学術論文としてまとめ掲載された. 次に,カオス変調の性能改善を行った.これまでのカオスMIMOでは中心極限定理の原理でガウス信号を生成していたため,10系統程度の独立なカオスが必要であり,送信信号を生成する際の計算量が増加していた.さらに位相特性も若干一様分布から外れており,その結果として誤り率特性に改善の余地があった.そこで,送信信号生成にBox-Muller法を適用して統計的性質を改善し,1系統のカオスで通信路符号化の特性を向上させることができることを示した. さらに,ターボ復号における性能向上を検討した.外部符号の連接を行う場合,これまでは計算量削減のために復号方法にシーケンス単位のLLRを算出していたが,若干の特性劣化が生じていた.そこで,最大事後確率復号であるシンボルMAP(maximum a posteriori)復号方法をカオスMIMO手法に適用して,さらなる誤り率性能向上の効果を得た. また,上記の改善手法については安全性の性能についても評価を行い,これまで同様の秘匿性,つまり計算量的安全性が得られていることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的に記載の 2)外部通信路符号接続によるターボ符号化伝送の構築(目的B) の理論的検証と,シンボルMAP復号適用によるさらなる改善が得られているため.また, 3)提案手法の安全性評価と安全性改善手法の構築(目的C) の計算量的安全性の評価手法がほぼ確立され,安全性を示すことができているため. さらに,Box-Muller法の適用にするカオスMIMOのビット誤り率特性改善が得られたため.
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今後の研究の推進方策 |
研究目的に記載の目的A-Dに対してさらなる性能改善を行う予定である.特に第5世代移動通信システム(5G)で必要とされている低遅延伝送に対し,本手法の低符号化率短符号長伝送が適していると考えられるので検討する.これにより5Gの低遅延公賓櫃伝送だけでなく,伝送の安全性向上にも寄与できるのではないかと考えられる. また,5Gで検討されているsparse code multiple access (SCMA)と呼ばれる非直交多元接続手法に,本提案カオス変調手法が適用できることが分かった.その結果,即時送信的な低遅延物理層秘匿多元接続手法が実現できることが分かった.この手法について一部発表したが,性能改善を目指しさらに検討する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
ネットワーク接続ハードディスクの調達が別予算で可能となったため.
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次年度使用額の使用計画 |
研究発表旅費,及び論文出版費用に充てる予定である.
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