導電性織物を使った柔らかい構造のアンテナとして、キャビティ付きスロットアンテナを取り扱い、設計・作製・測定を行った。前年度までの解析によって、アンテナの曲げによる動作周波数帯の変化は主にキャビティの変形によるものであることは推測できていた。どのようなメカニズムで影響を及ぼしているかは解明できなかったが、この曲げに対する影響を小さくするためにまずはスロット線路をメアンダ状に変え、キャビティ上面における面積を小さくすることでキャビティ自体を小型化することを試みた。メアンダの形を調整することとキャビティ高さを小さくすることで、アンテナのサイズを約0.3倍にまで小型化できた。 また、同じく曲げに対する影響を小さくするため、キャビティをこれまでの直方体から円筒形に変え、その円筒形を半分に切った形のものを使うことで小型化を図った。その結果できた半円筒形キャビティ付きスロットアンテナは従来のものよりも曲げた際の動作周波数帯の遷移が小さく、また放射パターンも変形が小さくなった。 また、半円筒をさらに半分にした1/4円筒形のキャビティ付きスロットアンテナを試作して、特性測定を行った。これは導電性織物ではなく金属シートを使用して試作したものであり、スロット部が直角に曲がりV字形になったものであるが、920MHz帯において直線偏波を放射し、これまでと同様の放射パターンが得られることが確認できた。まだ曲げに対する特性は調査しておらず、今後、解析と測定を続ける必要がある。さらに、この920MHz帯において設計したアンテナについてはこれまでのようにマイクロストリップ線路スタブの付いた給電線を使用せずに、RFIDチップを直接付けた上で整合を取るための手法について検討した。
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