研究課題/領域番号 |
26420362
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
趙 華安 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (60258340)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | MIMO / 時空間符号 / 協調無線システム / シンボル誤り率 / 瞬断率 |
研究実績の概要 |
MIMO(Multiple Input Multiple Output)技術が高速かつ高品質な無線通信に使われている。しかし,MIMOには幾つかの限界(端末に複数アンテナの設置困難,電力制限,高速移動時の電波干渉等)がある。このような限界を突破するために,近年beyond 4Gの技術として,協調無線通信(Cooperative Communication Systems)が注目されている。端末同士が互いに協調することで,仮想的なアレーアンテナを構築し,単一アンテナの端末でも,MIMO と同等の性能が得られるため,高性能(高速・低電力・高信頼性)の無線通信が実現できる。 H26年度,高速かつ高品質のMIMOシステムを実現する送信側の理論研究と実験検証を行い,直交時空間ブロック符号を協調無線通信に応用するため,適応性をもつ時空間符号CDEF-DSTC(Distributed Space-Time Coding)を開発・研究し,その性能の良さがシミュレーション結果で明らかになった。また,時空間符号の設計規範に関わる高速アルゴリズムを用いて,開発した符号と既存の符号と比べ,高ダイバーシチかつ高レートであると分かった。H26年度の研究成果は,高い品質を保ったまま高速な通信速度で通信可能な符号を生成することができるようになり,今後の研究である高性能協調無線システムの開発と研究に資することが大きい。 H26年度の主な研究成果として,適応技術を用いる時空間符号は,通信のシンボル誤り率を大幅に改善し(信号雑音比SNR=20dBのとき,およそ1/9000から1/40000に),瞬断率も1/10程度減らし,通信速度を3倍以上向上させた。研究成果の主要部は,学術誌の論文2編,及び審査付き国際学会論文6編,国内学会論文5編としてすでに公表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
4G技術が予想より早く普及しており,Beyond 4G(5G)技術が著しく注目されている。このような社会ニーズにおいて,研究は当初予定よりやや早めに順調に進んでいる。 次世代無線通信技術である協調無線通信システム(Cooperative Wireless Communications,複数の無線端末が協調したリレーとなり,仮想的にアレイアンテナを構築できる)の通信性能を向上させる技術を思案し,空間ダイバーシチ利得を向上させることができた。新しいプロトコルCDEF(CSI Directed Estimate and Forward)の提案により,通信路のチャンネル情報(CSI:Channel State Information)を利用して送受信することにより,従来のAF(Amplify and Forward)とDF(Decode and Forward)と比べ,通信の誤り率,瞬断率,通信速度を向上させることが明らかになった。また,リレーのマネジメントについて研究を始め,適応性を有するリレーの選択方法と電力配分方法を提案したためであった。
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今後の研究の推進方策 |
協調無線通信とは,基地局及び宛先局(モバイル端末)以外の無線局(近傍の複数端末)を中継局(リレー)として用い,空間ダイバーシチ利得を得る技術である。今後の研究内容は,中継局管理の技術(リレーマネジメント)である。中継局を基にした協調ダイバーシチをいかに求め得るかが非常に重要な課題である。注目される中継プロトコルとしては,AFやDF,compress-and-forward (CF)などが挙げられる。本研究では,新しい中継プロトコルを導入し,最適な(伝送速度を最大となる)電力配分法を用いた中継技術を提案する。当初の提案した2ホップのシステムモデルを改良し,マルチホップのシステムにおける中継局との複数の相互通信を,仮想的に一組のアンテナアレーとして動作させることにより,高品質な通信が行える。この方式では,仮想的な複数のアンテナを用いて信号を送信するため, MIMOシステムとなり,マルチビーム伝送を行うことにより伝送効率の向上が期待できる。
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