研究課題/領域番号 |
26420365
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
杉山 久佳 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (20264799)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | スマートグリッド / 配電ネットワーク / 同期ネットワーク / 送電プロトコル / 電力パケット |
研究実績の概要 |
研究課題とする直接中継型電力パケット伝送ネットワーク(以下,パルス化配電ネットワークと呼ぶ)に関して,(1) 電力消費者の受電要求にもとづく送電・受電プロトコルの設計,および (2) ネットワーク内各ノードが有する送電容量テーブル形成アルゴリズムの設計,の2点を行った. (1) は,従来のデータ伝送ネットワークとは異なる,電力ネットワークに特有の問題に関わる.電力ネットワークでは,送電・受電プロトコルが送電者ではなく受電者による受電要求を起点として開始する必要がある.また同プロトコルは,同一の受電者に対する複数の送電者による協調的給電を可能とし,同時に各送電者が適切な送電量を動的に調整することを可能とする必要がある.これらの要求を満たす送電・受電プロトコルを設計した.本設計の要点は,電力パケットネットワークの各ノードが有する送電容量テーブルに,各電力消費者の受電要求量を拡張データとして含め,繰り返し更新する点にある.本プロトコルによる配電ネットワークの動作をシミュレーションによって確認した. (2) 送電容量テーブルは,提案するパルス化配電ネットワークの運用基盤であり,各ノードはこのテーブル上で繰り返し更新される情報に基づいて送電先への送電経路を決定し,送電に先立って経路上の電力スロットを予約する.同テーブルの更新アルゴリズムを設計し,シミュレーションによってその有効性を確認した.アルゴリズムの要点は以下である.まず各ノードが自己の隣接ノードへの送電リンク上の空き電力スロットを確認し,これにより当該隣接ノードを宛先とするエントリーを確定する.次に,得られたエントリーと当該隣接ノード上のエントリーとの比較により,さらに遠隔したノードへのエントリーを確定する.以上のプロセスを,すべての隣接ノードに対して繰り返す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の主要な研究目標は,パルス化配電ネットワークの運用基盤である送電容量テーブルの形成アルゴリズムであった.本アルゴリズムは以下の要素が必要である.(1) 送電容量テーブルを構成し,他のノードを宛先とす送電容量および送電可能電力スロットなどの情報を各エントリーを,隣接ノードとの情報交換によって更新するプロセス,および (2) 隣接ノード間の電力伝送において双方向の流ればあればこれを相殺する,双方向キャンセルのプロセス. このうち,(1) についてはほぼ計画通りの成果が得られたが,(2) については未達成である.ただし,次年度以降に予定していた,送電・受電プロトコルの設計においてある程度の進展が先んじて得られたので,これを考慮して,選択区分と自己評価した.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,10月に予定されている国際会議における展示部門など,実験的な成果を具体的に展示する機会が多く見込まれる.この理由から,当初の計画に加えて,提案方式の実験的な検証を平行して進める予定である.これまでも予備的な実験を行ってきたが,この結果,例えば電力用半導体の損失特性,およびこの特性を考慮した場合のシステム設計など,電力伝送に関わる重要な問題を多数発見した.したがって,実験によるパルス化配電ネットワークの動作検証に加えて,さらに最適なシステム設計などに関連して,研究内容を進展させてゆく方針である.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度使用額を見直してみると,主として物品費の使用額が見込み額に対して低い.これは,想定した実験用測定器(波形発生機,オシロスコープ等)が見込み額よりかなり安く入手できたことが理由である.
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次年度使用額の使用計画 |
予定した実験装置が,次年度は展示会に2回の出展を予定している.この装置に当初予定より予算を多くかけて来場者によりアピールする内容とする計画である.
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