研究課題とする直接中継型電力パケット伝送ネットワーク(パルス化配電ネットワーク)に関して,(1) 局所的配電ネットワークの運用方式検討,およびこれに関連して (2) パルス化送電が周囲の電波環境に及ぼす影響の2点の検討を行った. 項目(1)は,パルス化配電ネットワークの適用分野として,特に多数の分散型電源と電力消費者のみからな局所的な配電システムを想定し,この配電システムの効果的な動作を可能とする運用プロトコルの設計,および同システムの運用状況を実際に示すことのできる小規模な展示システムの作成からなる.このうち前者:運用プロトコルは,平成26年度の成果(送電・受電プロトコルの設計)に対して,さらに動的に変化する受電者の電力需要に柔軟に対応できるように発展させたものである.後者:展示システムは,パソコン上で作動するグラフィックシミュレータとインタフェース,およびこれとUSBケーブルで接続した電気回路システムからなる.このうちグラフィックシミュレータのみを1月の国際会議(IEEE CCNC2017)で展示した.電気回路部分は現在作成中である. 項目(2)では,特に民家に近接したパルス化配電ネットワークの電波環境への影響を評価した.同ネットワークが伝送するパルス流は,従来の送電波形とは異なって高周波成分を多く含むので,これによって発生する電磁界が,電波法が規定する微弱無線電波の基準を満たす条件を明らかにする必要がある.検討の結果,雑音電力自体は従来の送電方式に対して増大するが,ノイズスペクトル上のピーク値に関しては逆に低減すること,また基準値を満たす送電電流の上限値などが明らかとなった.本成果は国際会議(IEEE ICCE-TW2017)で発表の予定である.
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