平成28年度は,当初予定の研究課題2(1)「ユーザ行動パターンを考慮したP2PTVトラヒック特性分析」と研究課題2(2)「アプリケーション開始時やチャネル切替時などに発生する過渡的トラヒックの分析」を中心に,P2P映像配信サービス(P2PTV)利用時に発生するトラヒックのモデル化について検討を実施した. まず,P2PTVアプリケーションとして非常に人気の高いPPStream,PPTV,SopCastにおいて,動画視聴開始から終了までに発生するトラヒックの分析を実施した.多数の視聴データをもとに発生するトラヒックの特性を分析したところ,3~10のピアに同時接続しながら低スループットで継続的に通信が発生する場合(ステーブルトラヒック)と,1~3個のピアのみと接続しながら高スループットで短時間の通信がバースト的に発生する場合(バースティトラヒック)の2種類が観測された.このことから,人気の高い動画の場合には豊富な接続先ピアが容易に見つかり,通信が安定的に確保できるのに対し,人気の低い動画の場合には動画のオリジナルサーバから一気にダウンロードしている傾向が発見できた. そこで,これらの2種類の特徴的なトラヒックを統計的に分析し,トラヒックのモデル化を実施した.具体的には接続ピア数,スループット発生頻度,ピア滞在時間の確率分布を統計的に求め,定式化を行った.その結果,ステーブルトラヒック,バースティトラヒックともに,非常に高い決定係数をもつ近似関数を作成することができた.これらのトラヒックモデルを用いることで,実際に発生するP2PTVトラヒックに類似したトラヒックを擬似的に発生させることが可能となった.今後,P2PTVのシミュレーションなどを行う際に非常に有効なモデルを提案するできたと結論できる.
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