本研究は情報理論に基つき確率構造が未知のネットワークにおける高信頼符号化に関する研究を行うものである.情報理論における代表的な通信の数理モデルとして1.情報源符号化問題,2.通信路符号化問題の二つがある.本研究ではこれらの問題において誤り確率を適切に設定すると確率構造が未知の状況が混合情報源,混合通信路により表されることに着目し特に混合情報源,混合通信路を対象とした解析に重点を置いている.平成29年度は以下の結果を得た. 1. 誤りを許す可変長無歪み情報源符号化において平均符号コスト(符号コストの期待値)の一次および二次達成可能レートに関する一般公式を導いた.符号コストは符号長を一般化した概念であり,我々の得た一般公式は従来の平均符号長に関する結果を一般化した結果と言える. 2. 誤りを許す可変長無歪み情報源符号化においてオーバーフロー確率を考え,その一次及び二次最適しきい値の一般公式を導いた.得られた結果から混合情報源に対する最適しきい値を容易に得ることができる. 3.情報源符号化問題および通信路符号化問題と密接な関係を持つ仮説検定問題に対して,帰無仮説および対立仮説を混合情報源とした場合の一次及び二次最適指数の公式を導いた. 4. 情報源符号化問題と関連のある情報源resolvability問題における最適レートの一般公式を得た. 上記結果1は電子情報通信学会英文論文誌に,結果3はEntropyにそれぞれ掲載済みである.結果2は2017 IEEE Information Theory Workshopにおいて発表済みであり,今後結果を発展させて論文誌に投稿予定である.結果4については次年度6月に開催される2018 IEEE International Symposium on Information Theoryでの発表が決定している.
|