研究課題/領域番号 |
26420378
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
棟安 実治 関西大学, システム理工学部, 教授 (30229942)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | データ埋め込み / 印刷画像 / 携帯端末 / タブレット / レンズ歪み補正 / 周波数領域 / 画像特徴量 / 画像識別 |
研究実績の概要 |
本年度に得られた研究の成果は,以下の通りである.まず動画像を積極的に用いたデータ抽出アルゴリズムの開発では,画像補正のために用いる枠線の画素値から良好な画像を判断する手法,撮影時のガイド線を利用して枠線の大きさと形状から判断する手法について検討し,検出率の向上を得ることができた. 次に,データ抽出アルゴリズムの改良では,データの埋め込み位置に関して再検討を行った.その結果,画像の種類によって埋め込み位置を変える,それに応じて埋め込み時のデータの強さを調整することで,検出率が格段に向上することが明確になった.そのため,画像によって埋め込み位置を変更し,埋め込んだ位置を抽出アルゴリズム側で自動的に検出する手法を開発した.これらの手法により,様々な画像に対してほぼ100%の検出率を得ることが可能となった. また,ユーザインタフェースの開発では,枠線位置が正しくとらえられているかをユーザにフィードバックすることができるインターフェースを作成し,さらに枠線が取得できたと判定したときに自動的に検出を行うように改善を行った,これにより,画像取得時のユーザの負荷を大きく軽減することができるようになった.また,派生的な研究であるが,これを画像特徴量を用いた画像識別システムに応用し,絵画解説システムを試作した. 最後に利用できる画像解像度を多様にするため,これまで検討してきた周波数領域へのマーカ埋め込み手法をタブレット端末に実装して,検討を行った.その結果として,マーカの検出には100%成功し,それに基づいたデータ検出にもおおむね成功した. 以上の結果より,本研究で目標としている静的な画像からマーカを抽出するための基礎技術ならびにそれをARマーカとして適用するための準備はおおむね完了したと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,昨年度のタブレット端末への実装の完成を受けて,より実用的な観点からアルゴリズムを評価することができるようになった.その結果として,データ検出率の向上につながるユーザインタフェースの開発ならびにアルゴリズムの改良を行うことができた.また動画像を積極的に用いたデータ抽出アルゴリズムの開発においても一定の成果が得られた.これに加えて実験用仮想現実感システムの構築の基礎となる風景画像を対象とした画像識別システムの構築することもできた.そのため,本年度に設定したテーマについての研究は順調に推移していると考えている. さらに,昨年検討出来なかった画像の大きさ・種類に応じたデータ埋め込みとその検討についても,研究概要に示したとおり,種類に応じた埋め込み手法の検討と大きさをデータ検出プログラムに伝達するマーカ埋め込み法の検証を行ったことで目標を達成できた.これにより昨年度の遅れを取り戻すことがほぼできた.また画像特徴量についての検討も画像特徴量を用いた画像識別システムの開発を通じて行うことができ,来年度に向けて基本的な知見は得ることができたと考えている.また,アルゴリズムのロバスト性に関する評価についても,このシステムの開発を通じて評価手法の確立のめどを立てることが出来ている. ただ複数画像の取得については,基礎的な実験を行っているものの十分な評価が行えていないので,この点を解決する必要がある.しかし,本年同様のマンパワーを割り当てることでこれらの問題は解決可能であると考えている. 以上から全体として,研究はおおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
研究は順調に推移しており,これまでと同様に当初の計画通り研究を進めることを考えている.すなわち,昨年度と今年度に得られた結果を踏まえて,平成27年度以降に取り組む課題としてあげたものの中から翌年度は最終年度として,1)動画像を積極的に用いたデータ抽出アルゴリズムの開発では,特に取得画像内に複数枚の画像を取り込むことが可能なアルゴリズムについて評価を行う.また,さらに動画像という性質を積極的に用いる手法の検討を行う.2)実験用仮想現実感システムの構築では,データ埋め込みと画像特徴量を併用する手法を開発することで手法の自由度を高めるとともに,これまで開発してきたマーカ埋め込みを利用することで,画像の向きと位置を合わせて検出できる手法の研究を行う.これにより,簡単なラベルを用いて画像の紹介や室内の位置情報をユーザに伝達出来る手法の開発を行う.3)アルゴリズムのロバスト性に関する理論的・定量的評価では,プリンタとカメラによる画像劣化を模擬するモデルとして,ガウシアンフィルタを複数用いるモデルを採用し,それにより埋め込みデータがどのように変形を受けるかを評価することで手法のロバスト性に関する検討を行う.これらにより,当初掲げた研究テーマをほぼ完了することができると考えている. テーマの範囲が徐々に広がりつつあるので,研究担当の学生を十分に手当てするとともに,随時進捗状況をチェックすることによって,研究の速度を加速し内容を高度化することに努める.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度,研究を担当する学生の体調不良のため,実施できなかった研究内容を補うため,学生を割り当てた.しかし,替わったばかりであったため当初発表を予定していた国内学会,国際会議に参加・発表させるレベルまで至らず,これらの学生が利用するタブレット端末および開発用パソコンの購入の経費は執行できたが,旅費分として執行を予定した80万円のうち40万程度が執行できなかった.また,研究代表者の国際会議参加についても,当初予定して採録まで至った国際会議を学内業務の関係上,どうしてもキャンセルせざるを得ない状況となり,執行を取りやめた.この分で25万程度の執行が出来なかった.以上から,旅費として合わせて60万円程度の執行を出来ず,これが使用額に差異が生じた原因である.
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度は,執行できなかった60万円については,さらに学生を加えて研究を加速するために,タブレット端末の購入などの消耗品購入に30万円程度を振り当てる.残りは,国内・国際会議に成果を積極的に発表することで70万円程度執行したいと考えている.そのほかの経費としては従来から予定されている通りに人件費・謝金などに20万円,その他の経費に30万円程度を割り当て,支出することを考えている.これにより,次年度使用額と配分額を加えた152万1268円を執行する予定であり,今年度の残額もすべて予定通り執行できると考えている.
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