本研究は,皮膚ガンのハイパースペクトル画像から得た3次元光吸収・散乱係数分布を用いて,生体内光伝搬をボクセル型光子フルーエンスにより計算解析し,反射光成分から皮膚画像を再構成することで,光吸収・散乱異常の定量化を行う方式の新規開発を目指し ている. 平成28年度は,実用性を考慮し,将来の臨床応用場面で不適切・不合理と判断された推定結果に対して,ハイパースペクトル画像からの光吸収・散乱係数分布を再度推定する目的で,画像の色彩3情報(明度,彩度,色相)と,吸収・散乱係数値に基づく血液量や組織変性と関連付けて計算パラメーター値をフィードバックするソフトウェアを前年度設計した基本アルゴリズムに基づきプログラム開発した.これにより,本手法で得られた腫瘍などの疾患部が光吸収性を主体とするか,組織変性など光散乱性を主体とするかを事前のまたは別検査による知見と矛盾した場合に再度修正推定できるようになった. 一連のソフトウェアを一台のPC上で動かせるようにシステム統合を行った.これにより,ハイパーハイパースペクトル撮像に始まり,吸収・散乱係数推定,光伝搬解析,画像再構成を経て,画像と吸収・散乱定量値表示,およびフィードバック機能を統合的に実施択可能になった. 寒天およびシリコーンを母材とした多層構造型人工皮膚ファントムを作成し,構築した統合システムを用いて,血液成分濃度,散乱体濃度変化に伴う画像からの推定結果をファントム設定値と比較検証し,本手法の基本的な有用性を確認した.また,ファントムの形状による光反射の効果が十分に除去できず一部に不安定は推定結果を生じる問題が新たに分かり,鏡面反射の抑制と画像陰影部分の補正を追加することで,この点の対応も行った.
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