前年度までの研究では、シリコーンゴム材では、プラズマ等で加速劣化された試料の表面抵抗と水の接触角との間に相関関係がみられた。これは、帯電水滴スプレーを使う必要がなく、簡易的に濡れ性が評価できることを示唆するものであった。そこで、最終年度は、予定を変更し、様々な絶縁材料に対してプラズマ劣化させた試料の抵抗と接触角のと関係を調べた。 プラズマ改質による絶縁性の低下はシリコーンゴム,ポリエチレン,ABSおよびガラスで見られた,アクリル,ポリプロピレン,ポリカーボネイトでは絶縁性の低下が見られなかった。各サンプルでプラズマ改質によって導入される官能基には違いが見られた。シリコーンゴムはヒドロキシル基(-OH) ,ポリエチレンはヒドロキシル基とカルボニル基(C=O) ,アクリルはカルボニル基,ポリプロピレンはカルボニル基,カルボキシル基 (-COOH),ABSはヒドロキシル基,カルボキシル基,ポリカーボネイトはカルボニル基,カルボキシル基[8]を生成することが分かっている。ガラスに関しては無改質においてヒドロキシル基を持つことが分かっている。シリコーンゴム,ポリエチレン,ABSおよびガラスは絶縁性が低下したが,これらの材料試料にはいずれもヒドロキシル基が含まれている。したがって,材料が劣化する際にヒドロキシル基が生成される材料では絶縁性の低下がみられる材料である可能性が高いことが明らかになった。劣化の過程でヒドロキシル基が導入されるかどうかについては材質だけでなく紫外線等のエネルギーにも関係するため,プラズマ改質の結果のみで断定的な結論を出すことはできず,今後さらなる検討が必要である。
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