当初の申請書における今年度の研究目的は、申請者が以前開発した独自の電磁波源位置特定法を用いることで、金属管表面に生じたき裂からの漏洩電磁波を遠隔計測し、離れた位置からき裂位置を特定する研究を実施する予定であった。(外部計測法) しかし昨年度までの研究結果から、当初の申請書で予定していた外部計測法よりも、金属管内を伝搬する電磁波を用いた計測方法(内部計測法)の方が容易かつ精度良くき裂や異物の位置を特定できることが判明した。これには、金属管内に広帯域な電磁波を放射し、周波数ー時間変換をおこなうことで精度良くき裂や異物の位置特定を可能とする方法である。しかしこの計測方法は、広帯域で高性能な電磁波放射プローブが必要となる。 そこで今年度は、昨年度の今後の課題であった広帯域高性能な電磁波放射プローブの開発をおこなった。開発の方法として、研究室所有の電磁波シミュレータと数値解析用PCクラスタを活用し、金属管内でも広帯域で高性能放射特性が得られるプローブ形状を設計した。その結果、従来の直線状導体を放射体とするプローブより、導体中間部を太くした形状のプローブが広帯域周波数特性に優れていることが分かり、さらに特定の誘電率を持つ誘電体をプローブにかぶせることで広帯域で低反射特性となることが判明した。そこで、このシミュレーション結果で得られた形状・材料のプローブを作製し、本研究課題である金属管の異常検出の実証実験をおこなった。その結果、この新たに開発した高性能プローブを使用することで、金属管内に存在する寸法が1mmに満たない異物であっても検出可能であることを実証した。この結果、従来の異常検出方法と比べて大幅な高感度化を達成することができた。
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