本研究課題では,光ファイバ無線技術を用いたUWB型センサネットワークの構築を目的として,信号処理部や信号伝送の一部を光領域で行うことで,電気信号処理と比べて広帯域かつ高速信号処理が可能であり,また,電気的な環境雑音耐性を有するシステムの構築が可能となる. 昨年度,端末からの受信信号は10mVと検証途中において受信レベルの低下が認められたため調査したところ,利用していた高速光検知器の感度が低下していたことが判明した.本年度はその対策と比較的安価な低感度光検知器の利用および消費電力・装置大型化の抑制を想定して,電気増幅器の追加ではなく標本化ファイバグレーティング(FBG)の反射率向上を目指し,次の2点:1.複数のFBGの個々の反射率を上げる,2.FBGの個数を増加させる,について検証した.計算機シミュレーションの結果では,前述1の方法では-3dB以上の反射率が必要となり作製が困難であることが分かった.一方2の方法では個々のFBGは従来と同様の反射率で受信レベルを約1.8倍に向上することが分かった.約3倍の長尺のFBGが作製できる環境であれば実現性の点で期待できる方法である.しかしながら,本学で利用していた作製環境が経年劣化の関係で処分されることとなり利用不可能となった.ただし,電磁界解析による計算機シミュレーションによる結果低い受信レベルのみが問題であるため,現状だと装置規模の増大を許せば既製品の高感度な高速光検知器や広帯域電気増幅器の利用で提案システムの有用性を損なうことなく十分対応可能であるといえる.
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