研究課題/領域番号 |
26420387
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
章 忠 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50254579)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 信号処理 / 異常検査 / ウェーブレット変換 / 心電図解析 / フィルタ |
研究実績の概要 |
H26年度では,信号に合う最適基底の構成法を考案し,それを用いる新たな可変フィルタバンドの離散ウェーブレット変換(VFB-DWT)を提案した.VBF-DWTは従来の分解・再構成数列の代わりにVBFを用いることにより実現されている.VBFはバンドパスフィルタとバンド阻止フィルタからなり,検出したい周波数成分に合わせて構成される.またVBFを用いるVBF-DWTの信号再構成条件としては,各分解レベルで作成された可変バンドフィルタの組み合わせがそのレベルのベースDWTの分解数列を構成しなければならない.VBFが複数のレベルに使用される場合には,レベル毎にこの再構成条件を満足すればよいことがわかった. さらに胎児心電抽出を例にし,VBFの構成法とVBF-DWTの有効性を検証した.得られたおもな結果は以下の通りである.胎児心電成分のみが存在する周波数帯域を選択して可変バンドフィルタ(VBF)を構成する手法は目的信号に合う最適基底を構成するに有効であった.また構成された可変バンドフィルタ(VBF)を用いるVBF-DWTにウェーブレット縮退法を適用し胎児心電の抽出に成功した.そして胎児心電抽出においてウェーブレット変換の基底系の良さを評価するために,情報エントロピーを指標とした評価方法を提案し,VBF-DWTとWPTの違いを評価できてその有効性を確認した.最後に胎児心電,母体心電およびホワイトノイズによる合成信号およびICAにより分離された心電信号を用いて検証した結果,VBF-DWTのVBFによる基底系がBBAにより選出されたWPTの基底系より胎児心電に適応し,より良い基底系となることが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初,H26年度の目標は以下の3点である.(1) 新たな可変バンドフィルタ(VBF)の最適直交基底の構成法を開発する.(2)完全再構成の理論と最適直交基底評価法を可変バンドフィルタを有する離散ウェーブレット変換(VBF-DWT)に適用しVBF-DWTの特性を評価する.(3)VBF-DWTを胎児心電などの1D信号に応用しその有効性を確認する.研究実績で報告するように、この目標を達成できた。 また,H27年度での目標中:(1)2次元 VBF設計法の開発と(2)2次元のVFB-DWTの計算法検討については,すでに研究しており,励ましい結果が得られている.今後さらに確認実験を通じて,改善・完成に力を入れることを考えている.」
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今後の研究の推進方策 |
2次元の場合には,ウェーブレット変換は方向成分の検出ができる.しかし検出可能な方向成分が少ない.本研究では任意方向の方向成分を検出する方向フィルタを開発し,ウェーブレット変換と組み合わせて高い方向検出性を実現する目標とする. この目標を実現するために,H27年度では,(1)2次元 VBF設計法の開発,(2)2次元のVFB-DWTの計算法検討,(3)2次元VFB-DWTを表面異常検査への応用と評価,という3点が開発項目と設定している. 2次元のマザーウェーブレット(MW)の特徴としては,MWの波形の進行方向がMWの周波数成分の2次元周波数平面上での位置に対応している.申請者はこの研究成果[6]に基づいて2次元MWの方向の定義を考え,自由な方向選択性を持つVBFフィルタの設計法を提案する.この方法はまず2次元周波数平面上で検出したい方向成分の位置を定め,カットオフ周波数f1,とf2で表す.次に従来のバンドパスフィルタの領域からカットオフ周波数f1,とf2のロー・ハイパスフィルタにより目的領域を切り出してVBFの通過フィルタの領域とし,残った領域を阻止フィルタの領域とする.よって方向成分の位置をカットオフ周波数f1,とf2で定めれば,自由に2次元 VBFを設計できる.2次元のVFB-DWTの計算法開発については,従来のMWの代わりにVBFを使用して計算する方法と,計算を従来どおり行った後VBFを付加して方向成分を抽出する方法を考えている.そして2つの方法の利点と欠点を検討し最適な方法を選択する.最後に開発した2次元VFB-DWTを表面異常検査へ応用しその有用性を評価する. 現在,開発項目の(1)と(2)はすでに着手し、励ましい研究結果が得られている.
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次年度使用額が生じた理由 |
可変フィルタバンド離散ウェーブレット変換の実現による革新的信号・画像処理法の創製の研究に使用する機器の選定に時間がかかり,3月に発注したが,年内に納品することができなかったためである。
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次年度使用額の使用計画 |
26年度中に発注した機器が,27年度初期に納品されるので、その機器の支払に使用する予定である.
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