本テーマは車のボディーのような表面が滑らかで鏡面的なプラスチック部品(以下、ワークと呼ぶ)の外観検査である。これらの検査は人による目視検査が主流で、その検査方法はワーク面に映した天井灯の鏡像とキズを重ねることで欠陥を見つけている。本方式はこの原理を利用した。初年度は、カメラなど光学系を選定し天井灯を模擬した縞模様を平面ディスプレイに表示して、そのワーク面上の鏡像周辺のキズがカメラにより撮像できることを確認した。2年目は、撮像した画像からキズの有無を判定するアルゴリズムに取り組んだ。ここではキズを抽出するための縞模様が逆にノイズとなるため、それを除去するフィルターを検討した。 最終年度は、評価用ワークのいくつかのキズに対してこれまでの手法を適応し、キズが検出できることを確認し本手法の有効性を示し、本成果を査読論文に投稿し採択された。さらに、これまで対象としたキズより細かい、人の目でも判別が難しい微小なキズについても検討を進めた。ここでは、三角波型など縞模様のパターンを検討した。その中で、パターンをシフトさせながら複数の画像を取得して合成することにより、ある程度小さなキズが画像上では確認できたが、ワーク特有のゆず肌等も目立つため、その後の検出処理に課題が残った。 一方、これらの外観検査作業ではカメラをロボットに搭載することがあり、その際のティーチングが課題となっており、ティーチングの簡易化にも取り組んだ。最初にワークの形状を距離センサで取得し、その距離画像からワーク面の法線方向を求めカメラの撮像位置を決めた。さらにこれらの位置にカメラを移動するためのロボットの軌道を計算した。このとき巡回セールスマン問題を応用してアームの干渉や最適経路等を考慮したパスの生成を行い、実験によって有効性を確認した。
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