研究課題/領域番号 |
26420396
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
桐生 昭吾 東京都市大学, 工学部, 教授 (00356908)
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研究分担者 |
堂前 篤志 独立行政法人産業技術総合研究所, 物理計測標準研究部門 量子電気標準研究グループ, 主任研究員 (20357552)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 共鳴型非接触電力伝送 / 電力測定 / 高精度チップ抵抗 / 不確かさ解析 |
研究実績の概要 |
共鳴型非接触電力伝送技術が実用化されつつある。現在、低周波領域では高精度な電力計が存在し、高周波領域ではインピーダンス整合を前提とした電力計が存在する。整合を前提としない場合、浮遊インダクタンスや浮遊容量により高精度な電力計測が困難であった。本年度では、まず抵抗分圧器について、近年開発された経時変化が少なく、温度特変化が小さい低浮遊インダクタンスのチップ抵抗を想定して浮遊容量による分圧比の誤差(実際の測定では不確かさ)を詳細に解析した。まず、使用を想定しているチップ抵抗の抵抗値と浮遊容量を実際に測定した。抵抗の公称値は10 kΩのものを用いた。600 kHzでの、各抵抗器の抵抗値の測定値は9.987 kΩ、ばらつきは標準偏差で0.004 kΩであった。一方、浮遊容量の測定値の平均は0.18 pF、ばらつきは0.005 pFであった。分圧器を構成する場合、抵抗値のばらつきが重要であり、目標としている1 %の不確かさに対して、一応、頻繁な校正をする必要の無い不確かさを有していることが明らかになった。また、浮遊容量については、二つの抵抗器による分圧器では分圧誤差が生じ、目標としている1 %を満たせないことを明らかにした。分圧比と逆比の静電容量を付加することにより浮遊容量による分圧比誤差を小さくできるが、付加する静電容量の経時変化、温度特性などが良好な素子を見つける必要がある。 共鳴型の非接触電力伝送では送受の共鳴周波数を一致させて設計することが多い。この場合、測定器の接続により、負荷効果により共振周波数が変化する可能性がある。この変化が電力効率に与える影響を解析した。その結果、特に送受で同じQ値を用いる場合、数 %の共振周波数の違いが負荷電流、電力効率を大きく低下させることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
分圧器の解析などは概ね順調に進んでいる。また、研究の進展により、負荷効果により共振周波数が変化する可能性があることが分かり、これを解析する必要が生じた。この部分については、取り敢えず、共振周波数の変化が電流や電力効率にどのような影響を及ぼすかについて解析を始めた。この結果、Q値が送受で近い値の場合、負荷電流や電力効率を低下させることを見出した。以上より、当初検討していた分圧器に静電容量を付加するタイプでは負荷効果を詳細に検討しなければならないことが明らかになった。現在、こちらを優先して研究を行なっている。また、高精度チップ抵抗の測定を行うためにはリード線の影響やコンタクトの影響を軽減できる特別な装置が必要なことが判明した。このため、当初、精密な測定が困難であった。この測定器装置を購入して、何とか精密な評価が可能となった。この測定により、使用を予定しているチップ抵抗器は分圧器を構成するのには浮遊容量を除いては十分な性能を有していることが分かった。しかしながら、二つの抵抗器のみで構成される分圧器については、この抵抗器の持つ浮遊容量により必要とされる精度(不確かさ)を実現できないことが明らかになった。 この抵抗器を用いて実際に分圧器を試作してみたところ、半田付けにより、抵抗器にストレスがかかり抵抗値が変化することが分かった。このため、半田付けの温度をかなり精密に制御する必要があることが分かり、新たな課題となった。 以上のいくつかの新たな問題点の判明により、分流器に関する検討が遅れている。今後、上記の問題点を解決して研究を加速する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
分圧器については、浮遊容量を軽減する構成について検討を行う。最も簡単な構成は分圧抵抗と逆比のキャパシタを負荷することであるが、経時変化、温度変化の小さいキャパシタを探す必要がある。また、キャパシタの付加により共振周波数が変化することが考えられるので、この負荷効果を解析する。次に、チップ抵抗を分圧比分直列に繋いだ構成について、実際に試作して測定を行う。この構成では、浮遊容量による分圧器誤差を小さくできることは解析により明らかになっているが、分圧器のサイズが無視できなく浮遊インダクタンスの影響を解析する必要がある。これについては、実際の分圧器を試作してどの位の浮遊インダクタンスが存在するかを測定する必要がる。試作に際し、半田付けにより抵抗器の値が変化することが判明したので、半田付けの温度制御を精密に行うなどの対策を行い、試作法の改善を行う。抵抗器の経時変化の測定については研究に着手しており、引き続き測定を行う。分圧器のサイズをそこそこ小さく方法としてケルビンバーレイ型の分圧器を検討している。これについても解析と実際の試作器による測定により、不確かさを評価する。 分流器については、分流器用のチップ抵抗が既に開発されているため、これの抵抗値のバラツキや経時変化などの測定に着手する。また、分流器についても浮遊容量による分流器誤差の解析が必要であり、これについては一部着手しているが、今後は詳細に解析を行い、目標とする1 %の不確かさを実現するための条件を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
備品の割引、旅費等の端数、消費税などによる
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品で使用
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