精密ディジタルマルチメータを用いた分圧器評価システムを構築し、10 kΩ10個からなる10:1の分圧器の評価を行った。この結果、周波数を大きくするにつれて、分圧器の分圧比に大きな差が生じることが明らかになった。この差の原因について、詳しく調べたところ、ディジタルマルチメータの入力容量によるものと判明した。ディジタルマルチメータの入力容量は100 pF以上あり、これにより、周波数を大きくすると負荷効果により、大きな差を生じることが明らかとなった。この入力容量の影響は、接続するケーブルの長さや種類によっても異なり、接続するケーブルの長さを数十cmにすると、数100 kHzでも大きな差(10 %以上)を生じることが明らかになった。 以上の問題点を受け、測定器による負荷効果を考慮に入れた理論計算を行った。その結果、分圧器を構成する抵抗器が10 kΩの場合、実現不可能なほど入力容量を小さくしなければ、目標とする1 %の不確かさを実現できないことが分かり、分圧器を構成する抵抗器の抵抗値を小さくしなければならないことが明らかになった。100Ωの場合は、 1 pF以下の入力容量を持つ測定器で測定しなければ、評価自体ができないことが明らかになった。また、配線インダクタンスの影響を軽減するために、測定リードをcm以下にすべきことが明らかになった。分圧器を構成する抵抗器を100Ω以下にする場合は、別途、被測定回路に対する負荷効果を考慮する必要がある。1 pF以下の入力容量を持つ測定器は、現在のところ、入手困難であり大きな研究課題となる。なお、1 pF以下の入力容量の高速演算増幅器は入手可能であることを確認しており、これを用いれば初段増幅器の作製は可能である。
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