研究課題/領域番号 |
26420398
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
橋本 学 中京大学, 工学部, 教授 (70510832)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 動作分析 / 手指認識 / 3次元物体認識 / 3次元モデリング / 人物動作識別 |
研究実績の概要 |
H26年度は,手作業動作の非接触認識および3次元物体の認識,さらに人物動作識別手法の提案と実証を行った.まず,手作業動作の認識としては,連続距離画像からの手の認識手法として,パターンマッチングによる手法を提案し,動画像からの自動認識が可能であること,ならびに別途検出した作業対象物体との位置関係を自動記述することも可能であることを実現した.このとき,手の位置と対象物の位置をそれぞれ占有率確率マップで表現し,統合する手法も開発した.また,パターンマッチングにより検出した指先候補群をもとにパーティクルフィルタを利用して手首を含めた手の全体位置を認識する手法も提案した.これについては3次元的な手のモデル(3次元ハンドモデル)を利用した仮説検証アルゴリズムを構成し,正しい仮説を効率よく探索できることを示した. 次に,3次元物体認識手法としては,少数データを用いる対象物の位置姿勢認識手法を提案し,基本的な性能を検証した.既開発のVPM法の考え方を取り入れた物体認識のための新たな3次元特徴量と,その最適化手法を提案し,類似パターンとの識別性能の点で従来法をしのぐ手法であることを実証した.また,多視点レンジデータをもとに,一部が遮蔽されている対象物に対しても有効に対象物を抽出できる基本アイデアを提案し,手持ち物体のモデリングという基本課題に対して有効であることを実証した. また,作業動作分析には人物のボディの認識も重要であることが判明したため,作業行動における各場面すなわち行動を構成する各動作を,パターン識別問題としてとらえ,各識別クラス毎に用意されたHMM(隠れマルコフモデル)識別器群とそれらの動作遷移確率を統合的に用いることを特徴とする,動作識別アルゴリズムを提案し,人物の一般的な行動分析を例に,有効性を実証した. 以上の成果を,論文1編,国際会議1件,口頭発表3件として発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H26年度は,当初計画していた手指認識に基づく手作業動作の非接触認識手法の提案,および少数データを用いた3D物体のリアルタイム認識手法の提案の2項目を達成し,基本アルゴリズムながらも学会等で発表できるレベルにまで性能を高めることができた. また,研究の過程において,動作分析には人物のボディによる動作識別も重要であることが判明したため,こちらについても研究を進め,HMMをベースにした動作識別の新手法を提案し,一般的な行動を構成する動作識別に適用できることを実証できた. さらに,H27年度に予定していた3つの研究項目に関して,フェーズ1(手作業動作の確率的表現法の提案),フェーズ2(3D物体の位置姿勢に関する確率的表現法の構築),フェーズ3(ベイズ推定に基づく手と物体の確率的統合手法の提案)についても,それぞれベースとなる考え方を検討し,基本アルゴリズムは完成した.ただし,現時点ではフェーズ2において3次元物体位置姿勢の確率的表現までは至っておらず2次元物体に限定されており,フェーズ3についてはベイズ推定のような確率的統合手法には至っていない. 以上のことから,H26年度に予定していた研究成果はほぼ達成し,新たな追加研究項目(人物ボディの動作識別)についても基本アルゴリズは完成した.さらにH27年度予定の研究項目3つの大部分についても基本アルゴリズムは提案できた(ただし一部は問題を限定している).このことから,本研究プロジェクトは,当初の計画以上に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
H27年度は,前年度に達成した動作認識の基本方式の性能改善をおこなうとともに,前年度に前倒しである程度の成果を得た3つの項目(手作業動作の確率的表現法の提案,3D物体の位置姿勢に関する確率的表現法の構築,ベイズ推定に基づく手と物体の確率的統合手法の提案)については,所望の認識性能を達成すべく,アルゴリズムを改良する.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究推進の過程で,想定ユーザの意見を調査したところ,作業動作の記録のためには,視線計測センサによるシステム高機能化と実証実験の必要性が高いことが判明した.そこで,モーションキャプチャー装置およびレンジファインダ装置を購入・使用する予定であったが,カメラ,スポット投光器等の購入によって同センサの試作を追加し,さらに対象物の計測精度検証のための回転テーブルを購入した.その結果,購入部品の費用との間に差異が生じた.なお,この追加システムにより,研究成果を強化することができ,学会でも発表した.また,モーションキャプチャー装置に関しては本年度は導入を見送り,動画像からの手領域中心のマニュアル教示による真値作成方式に切り替え,予定通り,計測精度検証を実施できた.
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次年度使用額の使用計画 |
来年度はレンジファインダ購入または試作用部品購入のために本費用を適用し,センシング精度の検証を実施する予定である.
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