本研究の目的は、2眼式および多眼式3D映像を視聴している時の輻湊運動を精密に測定して 輻湊運動と奥行き感の関係を解明することである。基礎的な実験は、瞳孔の中心位置を近赤外線で撮影した映像から画像処理で求める測定機器の立体視度計測システムの理論分解能が0.185度(11.1分)である。輻湊運動の測定精度を確認するため被験者の頭部をあご台だけで安定させ、実際の眼球運動と輻湊の測定精度を求めた。このために実視標による微小眼球運動1.0度の測定と眼前100cmと80cmの微小輻湊0.95度の測定を被験者3名で行い、約0.2度(12分)の微小測定精度を確認した。さらに眼前5m位置の視標を固視して、計測中の被験者頭部の安定性と固視の安定性は眼球運動で0.7度以下であることを確認した。ただし、実験データを観察すると微小輻湊の場合は被験者によって輻湊がうまく生じない場合があった。この後、裸眼立体視3D映像を視聴している時の水平輻湊運動を測定することができた。結果は、単純なボール球などの前後移動時の視差変化に対応する輻湊は生じることは測定できた。しかし、画像対象の視差分布が複雑な一般の立体映像の場合は、対象図形の個々の視差ではなく、画像全体の視差分布を反映して輻湊が発生することが分かった。したがって、輻湊を測定・分析することで、3D映像の視差分布が人間の視覚に与える影響が示唆された。また、対象映像内部の視差分布の複雑さを考慮して両眼視差と奥行き感の関係を求めなければならないと3D映像の品質向上が計れないことが示唆された。
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