研究実績の概要 |
本年度は,複合型磁気センサの試作とその駆動システムの試作,漏れ磁束法を用いるデータ収集システムの構築やLCRハイテスタを用いて複合型磁気センサの渦電流法の有効性も確認することを目的に研究を行った。この中で,複合型磁気センサは,フェライトコアを持った励磁コイル2個から成る一軸励磁系とパンケーキ型検出用コイルを用いて試作した。現在,この試作した複合型磁気センサとシンセサイザやロックインアンプを用いた駆動回路を用いてオーステナイトステンレスであるSUS304やSUS316を試料として疲労検出実験を行っている。また,本年度は,本研究の目的の一つである疲労形態の違いによる試料の材質変化を明らかにし,複合型磁気センサの開発・改良に資するデータを得る実験も行った。この実験は,試料(SUS316, SUS316L)を用い片振り引張疲労の分布状態や進行状態を,従来の平面曲げ疲労の実験と比較するデータを収集した。この結果は,「M. Oka, T. Yakushiji, and M. Enokizono, Evaluation of the Material Degradation of Austenitic Stainless Steel under Pulsating Tension Stress Using Magnetic Methods, Digests of 8th Asia-Pacific symposium on Applied Electromagnetics and Mechanics, pp.27-28, 2014」で発表し,日本AEM学会誌への採録も決まった。さらに,試料をSUS304として,片振り引張疲労と平面曲げ疲労の疲労状態の違いもFG型磁気センサを用いて検証した。この結果は,平成27年9月に神戸で開催され国際会議(ISEM2015)で発表する予定である。加えて,購入したLCRハイテスタを用いて,従来にない高周波励磁による疲労による板厚の変化に影響されない渦電流法のデータ収集も行った。この結果については本年度のいずれかの段階で発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は,現状の複合型磁気センサは,従来から用いているシンセサイザとパワーアンプで駆動し,パンケーキ型の検出コイルからの検出信号をロックインアンプを用いて検出した。これを,平成27年度は,当初の目的であるDAコンバータとパワーアンプを用いた駆動系と,髙安定な差動アンプとADコンバータを用いた検出系に組み直すことを行うつもりである。平成26年度に試作した一軸励磁系の複合型磁気センサであれば現有の機器で構成可能なのでなるべく早く稼働させ,多くのデータを収集したいと考えている。この一軸励磁系の複合型磁気センサを用いて平成27年度は,対象試料の材質を軟鋼(SPCC, SPHC, SS400など)を用い磁性体での疲労検出実験に臨みたいと考えている。また,当初予定どおりパワーアンプを追加購入し,励磁系を二軸とし回転磁界励磁とする複合型磁気センサの試作や評価を行う段階に早く入りたいと考えている。回転磁界複合型磁気センサの場合は,検出系のコイルを現在の試料に垂直方向の磁界の変化を検出するパンケーキ型コイルではなく,ケイ素鋼板などの磁気特性評価に用いられるHコイルのような試料に平行な磁界成分を検出する方式が有効である可能性があるため,これも試作したいと考えている。磁気センサの試作や計測プログラムの開発と並行して,各種の鉄系構造材に対して主に片振り引張疲労とセンサ出力の関係を精密に評価する実験も合わせて行うつもりである。さらに,従来から用いているパンケーキ型コイルを用いた渦電流法を磁性体の試料に適用し,最適な励磁周波数の決定やパンケーキ型コイルの形状の決定も行いたいと考えている。このような,計画でこの研究を進めたいと考えている。
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