研究課題/領域番号 |
26420408
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
江丸 貴紀 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30440952)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ロボティクス / SLAM |
研究実績の概要 |
本研究では移動ロボットについて「センシングされた信号に混入する雑音」「ロボットが移動する際の誤差」双方について統計的にモデル化を行い,モデル化された誤差の統計的特徴に基づく理論的な地図作成および自己位置同定のアルゴリズムを構築することにより,ロボットが自己位置同定と地図作成を同時に行うための手法であるSLAM の精度(accuracy)を向上させることを目的としたものである。これまでの研究では,たとえばカルマンフィルタ(KF)に代表されるようにその誤差はガウス分布に従うという前提条件を用いており,その前提に基づいたノルム・尤度(確からしさ)の計算がなされている。これに対し,実際のセンサや移動ロボットの特性を考慮した統計モデルの構築により,その誤差の影響を最小化する理論的に最適なノルム・尤度の設計が可能となり,SLAMの精度を飛躍的に向上させることが期待できる。 当該年度はセンサの雑音・誤差特性を考慮したうえで実用的な雑音モデルを構築を目的として研究を行った。現在,SLAM問題の解決のためにはレーザー測距センサ(LRS)が広く用いられている。この不確かさに対処するためには確率的解法が最も主流となっている。しかしながら,センサの誤差特性を実験的にモデル化し統計的に表現することにより,SLAMの推定精度を劣化させる不確かさを大幅に軽減できると考えられる。この誤差は環境や測定対象によって違いを示すはずであるが,いまだ実用的なモデル化はなされていない。そこで,移動ロボットの測距センサとして一般的に用いられているLRSを対象にその誤差モデルの構築を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実際のセンサが持つ不確かさに対処するためには確率的解法が最も主流となっており,拡張カルマンフィルタ(EKF),アンセンテッドカルマンフィルタ(UKF),パーティクルフィルタ(FastSLAM)などの適用が提案されている。しかしながら,センサの誤差特性を実験的にモデル化し統計的に表現することにより,SLAMの推定精度を劣化させる不確かさを大幅に軽減できると考えられる。誤差要因は測定環境,センサのハードウェア的な構造,さらには信号処理を含めたソフトウェア的な要因など多岐にわたる。これらの誤差特性をモデル化し統計的に表現するために,上記の要因を考慮したうえで様々な環境において実験的に検証を行い,広範囲において妥当性を持つ統計的な誤差モデルを構築した。
これらを踏まえ,当該年度の自己評価として「(2)おおむね順調に進展している」とする。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は平成26年度の研究によって得られた成果,そして課題を元に研究を実施する。まず,センサに対する誤差モデル構築の知見(課題1)を生かし,ロボットが移動する際の誤差モデルを構築する(課題2)。さらに構築されたた雑音モデルに対して適切なノルム・尤度の設計を行う(課題3)。
課題2:車輪移動ロボットの場合,カルマンフィルタを代表とする線形フィルタによって移動誤差モデルを表す手法が広く用いられている。また,オムニホイールを用いた全方向移動ロボットについては,これまでの研究でそのスリップをモデル化し,制御性能の改善を試みた。本研究では様々な移動ロボットに対して適用可能な誤差モデルの構築を目的とする。
課題3:課題1・2で構築されたセンサ・移動に関する誤差モデルの確率的な特徴を反映したノルム・尤度の設計を行うことにより,精度の高いSLAM 問題の解決を目的とする。誤差モデルの統計的な性質に基づくノルム・尤度の設計方法は未だ提案されておらず,この両者の並列的な解決を目指す。
|