本研究は移動ロボットの「センシングされた信号に混入する雑音」「ロボットが移動する際の誤差」双方についてモデル化を行い,モデル化された誤差の統計的特徴に基づく理論的な地図作成および自己位置同定のアルゴリズムを構築することにより,ロボットが自己位置同定と地図作成を同時に行うための手法であるSLAMの精度を向上させることを目的としたものである。当該年度は一昨年度,昨年度に得られた研究成果を視覚センサに適用する,さらには実環境において検証を行うことにより提案手法を実装したSLAMのロバスト性について検証を実施した。 まず視覚センサについては3次元情報を得ることができるkinectセンサを用いた研究を進めることにより,3次元情報に対しても提案手法が有効であることを明らかにした。また,最近研究が進んでいる深層学習(ディープラーニング)にも取り組み,特徴点を得ることが難しいことからこれまでSLAMの適用が難しかった屋外環境においてSLAMの適用を試みた。その結果,深層学習を適用することによってSLAMに必要な特徴点を得るための基礎的な成果は得られたが,様々な環境におけるロバストな認識を実現するためには更なる精度の向上が必要であることが分かった。また実環境における検証については農業環境・林業環境における実験を実施し,これらの環境における提案手法の適用可能性について検討を行った。これは我々がこれまでにターゲットとしてきた人工構造物で構成される環境とは異なり,ロボットが移動する際の誤差もフィールドの状況によって大きく異なり,また植物を測定の対象とする場合は特徴点に関する情報が時々刻々と変化するという難しさがある。このように様々な環境・状況下を統一的に扱うことが困難ではあるが,深層学習の適用によりロバストに特徴点を抽出することができる可能性を明らかにした。
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