研究課題/領域番号 |
26420410
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
陶山 貢市 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (80226612)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 制御工学 / システム工学 / ディペンダビリティ / アベイラビリティ |
研究実績の概要 |
多くの工業製品に含まれる制御システムに関して,その本来の機能に注目するディペンダビリティ (広義の信頼性) の評価法が技術的に確立されておらず,産業界が拠り所とする国際規格も制定されていない.外部への危害・悪影響に注目する安全性の評価法が準用されることも多く,高機能な制御技術を用いた工業製品が必ずしも適正かつ正当に評価されていないのが現状である.本研究は,世界に先駆けて制御システムのディペンダビリティ評価法を確立し,将来の国際規格化につなげることを目的とする. 日本信頼性学会編「新版 信頼性ハンドブック」(2014)第IV部第3章第12節で研究代表者が解説しているディペンダビリティ評価法をプロトタイプとし,制御システムの様々な機能(制御目的)の違いを評価に取り入れることで,アベイラビリティ性能指標値を与えるより一般的な評価法を構築した.この研究成果はすでに学会論文誌に投稿済みである.さらに,その計算を実際に行うソフトウエアを,本科学研究費補助金により購入したPCワークステーションを最大限に活用して行った. また,ディペンダビリティ管理という観点では,アベイラビリティ性能指標の目標値を達成しつつ,正常時の機能(制御性能)を最適化するような制御ロジックを求めることが必要となる.そのためのアルゴリズムには,(アベイラビリティ性能指標値を求めるための)連続時間マルコフ解析における状態遷移図上で制御システムのディペンダビリティと同一視できるような状態の集合の構成,それもコンピュータ上での効率的な構成が不可欠である.平成22-25年度の基盤研究(C) No.22560440「国際規格に準拠してレンジ逸脱に対する安全性を制御則で実現する日本発の新技術」による研究成果での構成手法を基礎として,本研究のためにはそれで十分か否かなど,平成26年度はその詳細な再検討を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究そのものの進展に加えて,(1) 故障後の制御システムの乱れ具合の定量的解析・評価に有効な,新しい切替L2ゲイン解析に関する研究成果や,(2) 制御ロジック設計アルゴリズムの検討の過程での副産物として,むだ時間系など,より一般的なシステムに対する制御システム設計の過程で有効と思われる代数的なツールに関する研究成果を得ることができた.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に得られた成果,特に制御ロジック設計に関する成果をさらに深化させ,より実用的なディペンダビリティ管理技術となるように,アルゴリズム面での検討・改良を行う.また,それをソフトウエアの形で具現化させる予定である.同時に,国際規格化を目指す活動として,国際的な場やSNSを通じた諸外国の規格関係者への研究成果のアピールも積極的に行っていきたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は,研究成果を具現化するソフトウエアの開発を効率的に行うため,高性能なPCワークステーションと開発のベースとなるソフトウエアを購入した.平成26年4月の交付申請書作成当時は,前者の費用として120万円を予定していたが,同等のスペックのものを100万円程度で購入することができた.また,後者については,当初は新しいライセンスを購入予定であったが,本研究で当面,必要となるツールボックスだけを既存のライセンスに追加購入することで対応し,その差額,約40万円程度を節約することができた.その結果,旅費等が当初予定額を超過した分を差し引いても,全体として39万円程度の次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
「理由」で述べたように,研究成果を具現化するソフトウエアの開発を行うにあたっての計算機環境は,当初の予定とまったく同等である.そのため,研究計画自体に変更はない.なお,次年度使用額は,平成27年度請求額とあわせて,今後新たに必要となる可能性があるツールボックスの追加購入や投稿中の学術論文の論文掲載料,さらには必要に応じて作成する予定であった諸外国の規格関係者への研究成果アピール用のパンフレットの作成費用などに充てる予定である.
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