研究課題/領域番号 |
26420415
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西田 豪 京都大学, 情報学研究科, 研究員 (80435669)
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研究分担者 |
坂本 登 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00283416)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 非線形制御 / ロバスト制御 / 出力フィードバック制御 / 分布定数系 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,「非線形H∞出力フィードバック制御理論」の実用化である.非線形H∞制御とは,制御モデルを作成する際に考慮されなかった変動要素を含む非線形系に対して,その変動の最悪ケースを想定して設計する制御手法であり,また,出力フィードバック制御とは,センサで観測が可能な状態のみを用いて構成される制御手法である.この2つの手法を融合させて制御器を設計する問題においては,安定性の証明における未解決点,および,その必要条件となるHamilton-Jacobi方程式の系統的解法が未確立という課題が残されている.
安定多様体法は,Hamilton-Jacobi方程式を数値的に解く,我々の研究グループが提案した手法である.安定多様体法を利用した非線形H∞制御は,効率的な数値解法が得られれば,これまで困難であった,制御対象特有の非線形性を有効に利用した制御が可能になる.例えば,適用例として,軽量化と高精度化により,複雑な形状や柔軟性が要求される,人工衛星,航空機,乗用車,半導体製造装置などが考えられる.また,これらの制御系には,全ての状態を観測するセンサーが常に装備されているとは限らず,出力フィードバック制御が実用上重要となる.
本研究が取り組む課題は,具体的に,1.「安定多様体法による非線形H∞出力フィードバック制御問題の数値解法の導出」,および,2.「非線形H∞出力フィードバック制御の柔軟構造物への適用」からなっている. 特に,本年度の研究成果として,1.「安定多様体法を用いた非線形H∞状態フィードバックによる車両の姿勢制御」.2.「安定多様体により設計された制御器のロバスト性についての基礎的考察」,3.「柔軟構造物の挙動を表現できる分布定数系に対して,最適制御器を設計する一手法の提案」が挙げられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた,研究課題項目の一つである「非線形H∞出力フィードバック制御問題の再定式化」については,その準備段階として,より基本的かつ数値解法特有の性質である「安定多様体法を用いた制御系設計のロバスト性の考察」という課題を新たに設定し,これを実施した.また,その他の項目「安定多様体法における効率的探索方法の開発」,および,「並列化による安定多様体法の計算アルゴリズム効率化」については,具体的な適用例を深く調査することにより,より実用的な観点から解決策の提案を試みた.そして,これらの研究成果の発表を行った.
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題として,昨年度,直接取り組むことを見合わせていた課題「非線形H∞出力フィードバック制御問題の再定式化」について,新たに着手する.また,昨年度の研究成果として得られた具体的な適用例「非線形な波の伝搬における安定化制御」,「触媒反応における温度制御」,「車両系の姿勢制御」に関して,より詳細なロバスト性を達成する制御器の設計法を考案する.
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