研究課題/領域番号 |
26420418
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
増淵 泉 神戸大学, システム情報学研究科, 教授 (90283150)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 非線形制御 / 安定性解析 / 不連続システム / リアプノフ密度 / ゲインスケジュールド制御 / 線形行列不等式 / 離散値出力による制御 / 合意制御 |
研究実績の概要 |
高機能ロバスト非線形制御系設計法の構築に関し,次の研究を実施した. 不連続なベクトル場を持つ非線形システムのリアプノフ密度による安定性解析の結果を国際会議で発表し,論文がプロシーディングスに掲載された.また,非線形システムの平衡点への指数的な収束性を保証するリアプノフ密度の条件を導出た.従来研究では平衡点への単なる収束しか知られておらず,この結果はリアプノフ密度の方法の新たな可能性を拓く結果といえる.これを国内学会で発表した.また国際会議に投稿中である.さらに,時変非線形システムに対するリアプノフ密度による安定性条件を導出した.時変非線形システムに関する結果は,従来研究では平衡点の安定性を仮定するものしか知られていなかったが,この結果は平衡点の安定性の仮定は不要であり,より利用価値が高く,また外部入力信号を含むシステムなどへの応用が期待される.この結果を平成29年度開催の国際会議に投稿し,採択された. 切り替えを用いた,実装時の計算量の少ないゲインスケジュールド補償器の設計法の成果が国際ジャーナル論文として出版された.離散時間ゲインスケジュールド制御則のLMIを用いた設計法として,1時刻前のスケジューリングパラメータの値を用いる制御法を提案し,また解析のために拡大型のLMIを用いることにより,従来研究及びこれまでの本研究を通じて最も小さなl2ゲインの上界を与える設計法を得た.これを国内・国際学会にて発表した.また,離散値出力(位置・速度の符号)のみを用いたマルチエージェントシステムの合意位置制御則の収束性を,微分包含のフィリポフ解におけるラサールの不変性原理の拡張に基づいて証明した.この結果を国内学会で報告した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は,申請書記載のテーマ(1)-(4)のうち,(2)保守性の少ない離散時間ゲインスケジュールド制御系設計法の開発,(2)スイッチドシステムの制御応用,特に(3-1)離散値出力を併用する制御系の設計法の開発,(4)密度関数の方法に基づく非線形制御系の設計法の開発に関する研究成果が得られた.特に(4)に関しては指数安定性条件,非線形時変システムに対する条件など,理論を大きく進歩させることができた.これらについては国内外において成果を発表している.他方,(1)ロバスト最適化問題の有限次元緩和による計算法と厳密性検証については,計算機環境の変化があり,研究実施を平成27年度とすることとした.以上を総括して,全体として概ね順調に進展していると評価した.
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今後の研究の推進方策 |
高機能ロバスト非線形制御系設計法の構築に関し,今後は以下のように研究を推進する. ロバスト最適化問題の有限次元緩和による計算法と厳密性検証の新たな方法の構築について,離散時間ゲインスケジュールド制御問題におけるロバストSDPの緩和問題をターゲットとし,より現実的な問題への適用を試みる.これにより,本研究の過程で導出した離散時間ゲインスケジュールド制御系設計のためのLMI条件の有用性を検証する. 平成28年度までの研究により,リアプノフ密度による非線形時変システムの解の平衡点への収束性の条件が得られ,また時不変の非線形システムに対する指数安定性の条件が得られた.ここからの理論の発展として,逆定理の証明,時変非線形システムの正不変性と解の収束性を同時に特徴づける条件,指数安定性以外の収束速度を特徴付ける条件,入出力安定性の条件,フィードバック系の安定性の条件などが考えられる.これらの幾つかについて,可能なら理論的考察を進めることで,本研究の成果を発展させる.
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次年度使用額が生じた理由 |
情報収集のための会議参加の費用と費用の一部が他の予算により賄えたこと,また計算機実験の実施を次年度とし,そのための計算機の購入も次年度としたため,予算に余剰が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に計算機実験用の計算機を購入する.
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