研究課題/領域番号 |
26420423
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
児島 晃 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (80234756)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 予測制御理論 / H∞制御 / 電力システム制御 / 軌道追従制御 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,不確かな予測情報とその更新情報を合理的に利用する予見制御法を開発し,成果を1)自然エネルギーが大量に導入された系統制御,2)操作者のアシストと予測制御問題に展開することである.本年度得られた成果は,以下のように纏められる. (A) 予測情報の不確かさを克服する新たな予測制御論の確立(制御法の解明):H26年度に得た予見フィルタリング問題の解法を発展させて,不確かな予測情報を前提としたH∞予見制御則の構成法を明らかにした.設計手順では,無限次元系特有の近似計算が回避されており,集中定数系と同様の行列計算から制御則を構成することが可能である. (B) 太陽光発電大量導入時の日射量予測と系統制御(運転条件と予測制御性能の検討):太陽光発電が大量に導入された系統の負荷周波数制御問題の定式化と予見制御の効果を検討した.太陽光発電が大量に導入された系統においては,日射量予測から需給変動を予測できると考えられている.H26年度に明らかにされたH∞,H2予見制御の基本的な結果から,需給変動の予見情報と負荷周波数の関係を検討し,予見制御補償により変動が効果的に抑制されることを確認した. (C) 操作者のアシストと経路予測制御(予測制御則の適用と評価):H26年度に構成した実験システムに対して経路予測制御法とアシスト制御系の構成法を導いた.本制御システムでは,線形近似モデルを更新することにより制御法を適用する方法を採用しており,線形制御法を広く適用することが可能である.現時点では,LQ制御,モデル予測制御などの基本制御法による評価が完了した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予測不確かさを考慮した予見制御法が当初の計画通り解明され,本研究の基盤となる理論的結果がほぼ明らかにされている.応用的テーマ (B)太陽光発電大量導入時の日射量予測と系統制御においては,系統安定化・負荷周波数制御に予見制御法を適用する結果が得られ,不確かさを考慮した予見制御法(H27年度成果)を適用する基礎が整えられている.また,テーマ (C)においても,実験システムと提案法を適用するための設計モデルが検証され,基本的な制御法を適用した結果が得られている.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果に基づき,予測情報の不確かさを克服する予見制御法を体系化し,それらの成果を, 1) 自然エネルギーが大量の導入された系統制御,2) 操作者のアシストと予測制御問題に適用する.各課題の計画と推進方法は以下のように纏められる. (A) 予測情報の不確かさを克服する新たな予測制御論の確立(制御法の体系化):これまでに得た理論的成果を総括し,特に予測情報の不確かさと制御則の構造・既知の問題設定との対応など成果の体系化を行う. (B) 太陽光発電大量導入時の日射量予測と系統制御(運転条件と予測制御性能の評価):需給変動を考慮した系統安定化制御,負荷周波数制御に提案法を適用し,予測不確かさと性能の関係を評価する.また,一部の問題を多機系の制御問題に発展させる. (C) 操作者のアシストと経路予測制御(予測制御則の適用と評価):2リンクの実験システムの経路追従制御,アシスト制御問題に提案法を適用し,制御系の性能を明らかにする.また,モデル予測制御法の併用による制約条件の確保など,本課題特有の問題に着目した補助的なテーマを設定する.
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次年度使用額が生じた理由 |
数値実験・実験の補助を本予算で支出する必要がなくなり,また参加費等の予算支出が予定額を下回ったため.
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次年度使用額の使用計画 |
これらの予算は,物品費(実験・シミュレーション環境の補強,消耗品費)と旅費等に計上し,応用研究と成果発表に備えることとする.
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