研究課題/領域番号 |
26420424
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
小口 俊樹 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (50295474)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 制御工学 / 複雑系 / パターン形成 |
研究実績の概要 |
本研究の主目的は,連続空間拡散結合システムに対する時空パターン制御のための制御理論の構築であり,そのために研究テーマを二つのフェーズに分けている. フェーズaでは,主に離散時間拡散結合ネットワークシステムの時空パターン制御について検討し,フェーズbでは,連続空間拡散結合システムに対する時空パターン制御について取り組む.本年度は,主にフェーズaについて, a-i) これまでの同期条件の推定法の一般化,とa-ii) 大規模拡散結合システムに対する同期パターンの解析ツールの開発,の二点について,計画通りに実施した. a-i)については,スケーリングによる遅延双方向結合における部分同期パターンの推定法について,二項演算により構成されるネットワークにおける部分同期パターンについての考察を進めた.さらにネットワーク間の伝送遅延のみを考慮した遅延結合においては,部分同期がむだ時間の長さに依存せずに存在する場合があることを明らかにし,そのための十分条件の導出を行った.また,従来より用いていているグラフの公平分割による同期パターンの導出法を,公平分割の定義をより厳密にすることで,多様な遅延結合ネットワークでの同期問題へ拡張可能にしている.また,a-ii)として,公平分割による部分同期パターンの探索アルゴリズムを開発している. さらに,本年度は,次年度以降に予定していた超離散化を用いた偏微分方程式系の制御系設計について,その可能性の調査研究を行った.具体的には,超離散化および逆超離散化を用いた偏微分方程式系の制御系設計が可能であることを,簡単な例としてBurgers方程式を用いて確認し,提案する設計法により得られた制御系の妥当性を数値シミュレーションにより示した.以上に示した研究成果は,国内会議で発表を行ったほか,査読付国際会議へ論文投稿を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,研究実施計画に基づいて,予定の研究項目をほぼ終えている. a-ii)の解析ツールの開発には,一層利便性を高める必要があること,大規模ネットワークでの検証実験が必要であること,など次年度引き続き検討すべき事柄が有るが,当初2年目以降に予定していた超離散化による制御系設計についての検討も行い,その有効性についての指針を得ることができたことなど,研究計画よりも先に進行している事柄もある. したがって,全体として本研究の達成度は,おおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
今まで,ほぼ研究計画通りに研究が進められているため,27年度においてはフェーズbとして,連続空間拡散結合システムの時空パターン制御の研究へと展開する.フェーズbでは,b-i)空間離散可による反応拡散系におけるパターン制御問題,b-ii) 超離散化を用いた連続空間拡散結合ネットワークシステムの時空パターン制御問題をサブテーマに据え,研究を遂行する.特に,27年度においては,離散空間拡散結合ネットワークシステムとの関係を明確にするため,主にb-i)について検討を進め,とりわけ入力空間に制約のある場合について,遅延の有無を含めた包括的な理論展開を図る.また,27年度においては,a-ii)での大規模ネットワークにおける同期パターン解析のツールの妥当性の検証を年度後半に実施することを予定している.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は,本年度購入を計画していた並列計算機及び解析用計算機の購入を次年度に先送りしたためである.これらの計算機は,大規模拡散結合システムに対する同期パターンの解析及び3年目に予定している超離散化による反応拡散系のパターン制御での検証数値実験に用いるためのものであるが,用いる解析アルゴリズムに適切な並列計算環境を導入することが効果的と考え,本年度では解析手法,アルゴリズムの研究を重視し,本年度の結果を踏まえて,次年度の購入を予定している.
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次年度使用額の使用計画 |
本年度の研究を通じて得た解析アルゴリズム及び超離散化に基づく制御系設計の検証手法などに関する知見を踏まえて,次年度において並列計算機の購入を予定している.本年度購入を予定した意図は,主に次年度後半および3年目の数値実験で使用する環境準備にあったため,購入時期が移行したのみで,特に助成金の使用計画の変更はない.
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