研究課題/領域番号 |
26420426
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
滑川 徹 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (30262554)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 分散制御 / 最適制御 / 階層システム / エネルギー管理システム / マルチタイムスケール / 負荷周波数制御 / マイクログリッド |
研究実績の概要 |
本年度は、大規模分散階層型エネルギー管理システムの分散最適制御題として2つの課題に取り組み、以下の成果を得た。 1.大規模電力ネットワークに対して、状態と入力に関する重複情報を用いた分散階層制御法を提案した。まず、状態や入力を含むサブシステムが重複する階層システムを構築し、次に階層システムと元のシステムとの関係性を示した。このとき構築した階層システムと元のシステムの状態や評価出力の遷移が同じになる条件を導出し、更に階層システムに対する分散制御器を設計し、元のシステムに対応するように制御器を縮小した。この際に設計した制御器を元のシステムに適合する条件を導出した。更には分散型電源を含む複数エリアが連結した電力ネットワークの系統周波数制御問題に対して、提案手法を適用し、分散階層制御器を設計した。数値シミュレーションにより、分散階層制御器がシステムを安定化でき、周波数変動が所望の領域に抑えされていることを示した。 2.マルチタイムスケール性を有する風力発電機と蓄電池を含むマイクログリッドを対象とし、H∞制御を基とした負荷周波数制御法を提案した。はじめに、ディーゼル発電機と蓄電池の応答速度の違いを考慮した一般化プラントを作成した。そして、一般化プラントに対して静的H∞制御器を設計した。ここで、静的H∞制御の繰り返し計算においてしばしば生じる、過大な制御入力をもたらすゲインを回避するためのLMI条件を示し、静的H∞制御へと組み込んだ。数値シミュレーションにおいては、従来手法と比較することで、周波数変動の抑制と蓄電池残容量変化の抑制を示した。また、発電機と可変抵抗を用いた制御実験においても、提案手法によって周波数変動を抑制できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、大規模電力ネットワークに対して、状態と入力に関する重複情報を用いた分散階層制御法を提案し、その有効性を検証した。またマルチタイムスケール性を有する風力発電機と蓄電池を含むマイクログリッドを対象とし、H∞制御を基とした負荷周波数制御法を提案し、これについても従来の手法より良好な結果が得られている。 このことから目標である「時空間階層システムに対する分散最適制御手法の確立と、その分散型エネルギー管理システムへの応用」に向けておおむね順調に研究が進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
大規模分散階層型エネルギー管理システムのマルチタイムスケール制御問題をマルチレート制御の設定を基に発展させ、最適制御問題として定式化する。この際に異なるタイムスケールを有するシステムに対しては、ネステッドループシステムとして表現し、有限時間区間の最適化問題として定式化する。 またマルチ空間スケールの制御問題・推定問題を定式化し、最適制御問題を設定する。階層内での、重複情報を用いた分散型の階層最適制御に関して、最適状態フィードバック補償器を設計する。次に分散型最適推定器設計問題を設定し、推定器を含めた出力フィードバック系に拡張する。その後、有限時間区間の最適化問題を、分散型モデル予測制御問題として定式化する。その際に分散型階層システムの情報結合のクラスの中で直接扱うことの出来る対象の条件を明らかにする。また数値実験により、提案制御手法の有効性を検証する。 更には上記2つの課題を融合させ、大規模分散階層型エネルギー管理システムを時空間階層システムとして記述し、分散型最適制御システムを設計する。ここでは各サブシステム間の情報結合を情報縮約、情報拡大として表現し、分散階層制御器の設計を行う。
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