研究実績の概要 |
本研究で取組む着岸操船は低速航行時の操舵であるため風影響を強く受ける。本研究では船体運動をARX(Auto-Regressive eXogeneous)モデルにより表現し、予測制御法の一手法である一般化最小分散制御(GMVC)によって強風時において柔軟に操船できる操舵制御系を設計した。本研究では、運動計測システムを装備した練習船「弓削丸」について可搬な「船体運動簡易計測システム」を導入して船体運動をモデリングし、操舵制御系を設計した。モデリングは、指示舵角に対する旋回角速度の時間変化を解析した。計測データは、船速(初期状態)、操舵角(入力)、回頭角速度(出力)、風向風速(外乱)、潮流の流向流速(外乱)、波高(外乱)の時系列データを収集する。操舵性の運動モデルはARXモデルにより表す。モデル同定のための実験は、船舶を3, 4, 5ノットで直進航行させ、無風時において一定船速の下で右舵及び左舵10, 20, 30°に各々設定した時の旋回角速度を計測した。次に中風時(10m/sec以上の風)において向い風、左舷及び右舷からの風を受けた各々について左右の操舵角10, 20, 30°設定における旋回角速度応答を計測した。モデリングは入力:舵角、出力:旋回角速度としてARXモデルを同定した。設計したARX操舵応答モデル上において一般化最小分散制御を適用し、強風時においても変動しない操舵性を確立した。得られた成果は、 「時変系において外乱抑制性を付加した一般化最小分散制御の設計 -突風を受ける船舶操舵系への適用-」土井 正好,永本和寿,森泰親、電気学会 電子・情報・システム部門誌 134(9) 1167-1174 2014年9月 において論文発表した。
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