平成27年度において潮流時における船舶操舵性について実験したものの、一部の実験項目について初期条件(旋回角速度0、船速5ノット一定)が均一ではなかった。そこで平成28年度では、再度同様の条件において潮流時における操舵実験を行った。 本補足実験によって、船舶操舵性における潮流影響が明らかになった。実験結果は、船速に対抗した潮流では操舵入力に対する旋回性が強くなり、その反対に潮流と並行した船速では舵効きが弱くなる。そこで本研究では、潮流の影響を受けても無潮流時と変わらない操舵性を提供するアシスト制御系を設計した。 実験で得られた操舵応答データを元に、本研究では伝達関数およびARXモデルを設計した。船舶操舵は操舵入力に対する旋回角速度応答について大きなむだ時間を含むことから、本研究では予測制御法の一つである一般化最小分散制御法による操舵制御系を設計した。なお、一般化最小分散制御はそのままの制御構造では操舵系に適用することができない。なぜなら、潮流を受けることによって操舵性が変化するため時変系として扱う必要があるからである。そこで本研究では、ゲインスケジューリング型に改良とした一般化最小分散制御法を検討した。 なお本研究では、実船舶による制御実験はできなかった。なぜなら制御装置を実装することは期間を要し、実験利用した練習船を所有する弓削商船高専の承認が得られない。このため、提案制御法の有効性は主にシミュレーション上で評価していている。 研究成果は学術論文にまとめ、「潮流影響を調整した船舶操舵サーボ制御系の設計」の題目でシステム制御情報学会に投稿した。
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