研究課題/領域番号 |
26420463
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
長谷部 寛 日本大学, 理工学部, 講師 (60366565)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 林野火災 / 木材燃焼解析 / 数値流体解析 |
研究実績の概要 |
本研究は,風と木材燃焼の連成解析に基づいた新たな林野火災シミュレーション法の開発を目的としたものである.本年度は①木材燃焼モデルの検証,②数値流体解析法の改良,③気象モデルによる特定の地点,時間の風況予測を行った. まず始めに木材燃焼モデルの検証を行った結果,無風時の木材燃焼過程を良好な精度で予測するものの,有風時の延焼速度の精度が十分でないことが明らかとなった.ただし,木材燃焼過程の化学反応のモデル化に起因する問題か,燃焼熱を流体解析に組み込む連成過程に起因する問題か,明確ではなく,更なる検証が必要である.そのため現在新たな検証に資する実験データの取得に努めている. 木材燃焼モデルの検証とあわせて,数値流体解析法の改良を行った.これまでは燃焼熱による浮力効果をブシネスク近似により流体解析に取り込んでいた.しかし,ブシネスク近似は高温時の精度が十分でないとの指摘があった.そこで,室内火災のシミュレーションで良く用いられる低マッハ数近似を導入した.その結果,高温時の気流性状が改善された. 3点目として,気象モデルによる特定の地点,時間の風況予測を行った.当初は次年度に計画した内容であったが,検討に時間を要することが予測されたため,本年度より検討を開始した.気象モデルにはWRFを用い,東京の都心部や郊外など,いくつかの地点の風況予測を行い,気象庁アメダスのデータと比較検証を行った.アメダスデータとの乖離が若干見られたが,これは解析格子の粗さに起因すると考えられ,次年度導入予定の並列計算機を用いることで改善するものと見込まれる. 木材燃焼モデルには課題が残ったが,解析法全体として見れば,特定の地点,時間の予測を行うための素地を築くことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
木材の延焼に対する燃焼モデルの精度には課題が残ったが,当初は次年度から取り組む計画であった気象モデルを用いた特定の地点,時間の風況予測に取り掛かることができ,3次元流体解析法の改良も行ったことから,おおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は主として2つの点を主眼として進める.1点目は,本年度の課題に挙げた木材燃焼モデルの検証と改良である.新たな検証に資する実験データを早々に取得し,検証と改良を進める予定である.2点目は,当初の計画通り,気象モデルにより得られた広域の風況データを数値流体解析の境界条件として用いて,実地形上を対象とした風と木材燃焼の連成解析を実施することである.検討すべき点は,CFDよりも粗い解析格子の気象モデルから境界条件を作成する際に,風の流体力学的特性を満足させることにある.風工学の分野では既にいくつかの方法が提案されていることから,まずは既往の方法を用いる予定である. 以上の検討を踏まえることで,次年度新たな林野火災シミュレーション法の骨格が完成する見込みである.
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