研究課題/領域番号 |
26420465
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
子田 康弘 日本大学, 工学部, 准教授 (40328696)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | RCはり / 耐疲労性 / 低温環境 / 含水状態 |
研究実績の概要 |
種々の環境要因がRCはりの耐疲労性に及ぼす影響のなかで,低温環境下や含水状態がRCはりの耐疲労性に及ぼす影響を評価した研究例は極めて少ない現状にある。本研究課題における1年目では,環境温度とコンクリート中の含水状態に着目したRCはり供試体による静的載荷試験と高サイクル疲労試験を実施し,RCはりの耐疲労性を実験的に検討した。この実験では,含水状態の影響評価にあたり,既往の研究で行われている水中疲労試験に依らず,気中において含水状態を制御し,所定の含水量以上の水の侵入を絶ち載荷試験を実施したことも特徴である。 その結果,(1)円柱供試体を用いた圧縮強度試験より,気乾状態に比べ飽水状態にあるコンクリートは,常温では圧縮強度が低下し,低温では圧縮強度とヤング率の両方が増加した。(2)RCはりの静的載荷試験より,常温環境で飽水状態にある場合,最大荷重時の変位およびひび割れ分散性が低下し,一方で低温環境の場合は,凍結の影響で曲げ剛性と,最大荷重および最大荷重時の変位が増加した。このように常温における気乾状態のRCはりと異なる挙動が環境温度や含水状態によって生じる可能性を示した。(3)RCはりの疲労試験より,常温環境で飽水状態の場合,耐疲労性の低下が示された。このことから,飽水状態は,RCはりの耐疲労性の低下要因になりうると考えられた。供試体の破壊形態は,常温環境が主鉄筋の疲労破断であったのに対して低温環境で凍結したことによって上縁コンクリートの圧壊に破壊モードが変化した。これより,環境温度と含水状態によりRCはりの疲労破壊形態は異なる可能性が示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度から供試体を用いた疲労試験を行う計画とした。環境温度制御式万能載荷試験装置による疲労試験は,要素試験,部材試験ともに当初計画の通り実施できた。これにより,本研究課題の基準になる健全な鉄筋コンクリートの耐疲労性を明らかにできており,材料劣化と水分状態が耐疲労性に及ぼす影響の実験研究にシフトできるため,おおむね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画に従った実験の実施に加え,1条件当たりの供試体数を増やし,部材レベルにおけるこの種の影響の再現性を確認するとともに,版状の部材においても評価する予定である。これに関連して,今年度作製する供試体数を増やし,時間をあけずに疲労試験における実験結果のバラツキが評価できる実験体制にする予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題の2年目にあたり,載荷試験など各種実験とこれにともなう作業が生じ,種々の 物品を購入するため,使用額が生じている。また,学会等における研究発表や現地調査などに旅費を計上している。
|
次年度使用額の使用計画 |
工具用消耗品や載荷計測消耗品および文具類といった消耗品の購入と,東北地方における劣化構造物調査ならびに学会発表のための旅費を計画している。
|