研究課題/領域番号 |
26420467
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
沖中 知雄 近畿大学, 理工学部, 准教授 (90298985)
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研究分担者 |
MADDEGEDAR a.L. 東京大学, 地震研究所, 准教授 (20426290)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | き裂進展 / 内部き裂 / 画像計測 / 超高速ビデオカメラ / PDS-FEM |
研究実績の概要 |
本年度実施した実験と数値解析の実績は以下の通りである: 初期欠陥を含む円筒供試体(Φ50mm×100㎜)を作成した.供試体作成材料として光弾性感度をもつ透明な脆性材料であるエポキシ樹脂を用い,初期欠陥として直径10mmのアルミニウム製薄板円盤を供試体中央部に設置した.円盤の角度と載荷方向の為す角度は45度とした.次に,超高速ビデオカメラの撮影タイミングを内部き裂の進展開始を同期するための同期装置を開発した.本年度開発した同期装置はレーザーを用いた遮断トリガーである.き裂の予想進展経路上にレーザー光を照射し,透過光を光電変換素子により受光する.進展したき裂によってレーザー光が遮断されると光電変換素子への入光量が低下して電圧が低下することを利用し,電圧の低下を検知してカメラに撮影停止信号を発信する装置を設計した.開発された同期装置は,入光量の低下から約20μ秒で停止信号を発信でき,μ秒単位の時間分解能での高速撮影に十分な性能をもつものとすることに成功した. 作成された供試体を用いて一次元圧縮破壊試験を行った.初期欠陥から内部き裂を進展させ,内部き裂の進展状況を超高速ビデオカメラを用いて可視化することを試みた.開発された同期装置を用いることにより,毎秒50万枚の撮影速度でき裂の進展状況を可視化することに成功した.また,光弾性装置を用いて供試体内部の応力分布を干渉縞として可視化した.超高速ビデオカメラと開発された同期装置と組み合わせることにより,き裂の進展に伴う初期欠陥周辺部の応力場の変化を毎秒50万枚の撮影速度で画像計測することに成功した. 数値計算として,本年度はPDS-FEMと接触解析を組み合わせて2次元の準静的なき裂進展解析を実施した.別途実施した初期き裂を含む2次元供試体の一軸圧縮破壊試験結果と比較することにより,2次元数値解析モデルが良好な精度をもつことが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は(1)3次元内部き裂の進展状況とき裂の進展に伴うき裂近傍の応力場の変化を高時間分解能で画像計測する画像計測システムの開発,(2)3次元内部き裂の進展を再現できる3次元の動的なき裂進展解析手法の確立の2点である.以下にその進展状況を検討する: (1)の画像計測システムを開発するためには,き裂の進展開始と超高速ビデオカメラの撮影タイミングを同期させる同期装置の開発が必要である.平成26年度の研究では同期装置としてレーザーを用いた遮断トリガーを開発し,応答速度を20μ秒程度とすることに成功した.開発された同期装置を光弾性実験装置,超高速ビデオカメラと組み合わせることにより,高時間分解能な画像計測を可能とした.次に,光弾性感度をもつ透明材料で作成された内部に初期欠陥をもつ供試体を作成した.作成された供試体を用いて一軸圧縮破壊試験を行い,開発された画像計測システムを適用してき裂の進展過程の画像計測を試みた.その結果,き裂の進展状況と光弾性装置により可視化されたき裂周りの応力場の変化を時間分解能2μ秒で画像計測することに成功した. (2)の3次元の動的なき裂進展解析手法の確立の準備として,2次元でのき裂進展モデルの構築を行った.PDS-FEM手法と接触解析を組み合わせて一軸圧縮荷重下で初期き裂から進展を開始する2次元き裂の準静的な解析を試みた.その結果,別途実施した2次元き裂の進展実験結果と良好な一致をみせ,平成27年度以降の3次元き裂進展の動的解析手法の構築に十分な基礎データを得ることができた. 以上を総合的に判断し,研究はおおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ研究は順調に進展しており,当初の研究計画に大きな変更は必要としない. 平成27年度の研究計画を実験と数値解析に分けて以下に記述する: [実験]平成26年度に開発された画像計測装置の高速化を目指す.本研究で使用している超高速ビデオカメラの撮影速度の上限は毎秒100万枚である.同期装置をより高速化することにより,時間分解能1μ秒での画像計測装置の開発を試みる.また,平成26年度に実施された実験では,供試体中の初期欠陥は直径10mm,載荷方向と為す角度が45度であった.平成27年度は初期欠陥の直径を5mm,15mm,角度を30度,60°と変化させた供試体を作成して圧縮破壊試験を行い,初期欠陥のサイズや角度がき裂の進展過程や進展に伴う応力場の変化に与える影響について高時間分解能な画像計測を用いて検討を加える. [数値解析]3次元の動的なき裂進展解析手法の構築のために,平成27年度はPDS-FEMを用いた3次元内部き裂進展の準静的な解析モデルの構築を目指す.同時に,平成26年度に作成したPDS-FEMと接触要素を組み合わせた準静的な2次元き裂進展モデルを動的問題へと拡張する.拡張された2次元動的き裂進展の解析モデルを用いて,一軸圧縮荷重下で初期き裂から不安定成長を開始する2次元き裂の動的進展解析を試みる.この解析を通し,次年度以降に実施予定である,3次元の準静的モデルを動的モデルに拡張するための基礎的データを収集する.
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