研究課題/領域番号 |
26420467
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
沖中 知雄 近畿大学, 理工学部, 准教授 (90298985)
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研究分担者 |
Maddegedar a.L. 東京大学, 地震研究所, 准教授 (20426290)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 超高速ビデオカメラ / き裂進展 / 圧縮荷重 / PDS-FEM |
研究実績の概要 |
平成27年度は,圧縮荷重下で内部の初期欠陥から進展を開始するき裂の進展状況について,2つの実験を行った.まず,透明な脆性材料を用いて円盤型の初期欠陥を含む円筒型供試体を作成し,圧縮破壊試験を行った.材料中のき裂の進展過程は超高速ビデオカメラにより時間分解能1μ秒で画像計測され,圧縮荷重下での3次元き裂が進展と停止を繰り返しながら成長する進展過程が明らかになった.同時に,光弾性手法を用いて供試体中の応力場を主応力差の干渉縞として可視化し,き裂の進展状況と併せて画像計測した.これにより,き裂の進展に伴う供試体中の応力場の変化が明らかになった. また,不透明材料中で内部欠陥から進展するき裂について,X線CTを用いて可視化することを試みた.初期欠陥として内部に空洞をもつ円筒型供試体をセメントペーストを用いて作成し,X線CT装置中で圧縮破壊試験を行った.初期欠陥端部から進展するき裂は微細であるため,本学のX線CTの解像度で可視化することは困難であるが,進展き裂内部に造影剤を浸潤させることにより微細な内部き裂の撮影に成功した. 数値解析として,PDS(Particle Discretization Scheme)-FEMを用いたき裂進展解析の準備を行った.平成27年度は2次元き裂を対象とし,長さ15㎜の初期き裂を含む50㎜×50㎜の矩形供試体中のき裂の不安定成長について,動的な2次元解析を行った.き裂の角度は圧縮荷重載荷方向と45度としている.解析により得られた供試体中の主応力分布から光弾性干渉縞パターンを再現し,昨年以前に実施された2次元圧縮破壊試験結果との比較を行った.両者は良好な一致を示し,本研究で提案された解析手法が高い精度をもつものであることが示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
進捗状況について,実験と数値解析の進展状況について記述する. 【実験状況】当初の研究計画では,透明材料中の3次元内部き裂進展状況の超高速ビデオカメラによる画像計測が計画されていた.画像計測においては可視化システムの構築が重要となる.実験に必要となる可視化システムは光源,超高速ビデオカメラ,カメラとき裂進展タイミングを同期するための同期装置により構成されるが,高時間分解能での画像計測では同期装置の感度,反応速度が問題となる.本研究ではき裂の予想進展経路上にレーザーを照射し,き裂進展によるレーザーの遮断を感知する同期装置を作成した.作成された同期装置の反応速度は20μ秒以下であり,時間分解能1μ秒での画像計測に適用可能な性能を示した.これにより,高時間分解能でのき裂進展状況を可視化できるシステムが構成された. 構成された可視化システムを利用して,直径5mm,10mmの円盤を含む供試体について実験を遂行し,内部のき裂の進展状況を高時間分解能で画像計測することに成功している.また,供試体内部の応力分布も主応力差の干渉縞として画像計測することができた.以上から,総合的に良好に推移しているといえると考えている. 【数値解析状況】本研究では,PDS-FEMを用いて内部欠陥からのき裂進展の3次元動的解析を計画している.本年度はその準備として2次元動的解析を行ったが,解析結果は実験結果と良好な一致を示しており,動的PDS-FEM解析手法が進展開始,停止,再進展といったき裂の挙動を議論する上に置いて十分な精度をもつ解析手法であることが示された.3次元へ拡張する準備も進めており,総合的に良好に推移しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
来年度の研究計画について,実験と数値解析の各々の目標を示す. [実験] 直径20mmの薄板円盤を含む円筒型供試体中で,内部の円盤から進展するき裂の進展状況と進展に伴う応力場の変化を,開発された可視化システムを用いて画像計測する.内部き裂の進展は初期欠陥のサイズに強い依存性をもっており,平成27年度の実験で初期欠陥として採用された直径5mm,10mmの薄板円盤から成長したき裂は,供試体の破断には繋がらなかった.薄板円盤端部から成長を開始したき裂は,ある程度成長した段階で成長を止め,再進展を開始する前に供試体端部等欠陥とは無関係な箇所からの破壊が進行して供試体の破談を迎えた.予備実験では,直径20mmの薄板円盤を初期欠陥とした場合には,欠陥から進展したき裂が供試体の破断に繋がっている.そこで本年度は,このき裂の進展状況を高時間分解能で画像計測することにより,初期欠陥サイズの違いによるき裂進展挙動の違い,特に再進展挙動に与える影響について検討する. [数値解析] PDS-FEMを3次元問題に拡張し,内部欠陥からのき裂の進展挙動を準静的,動的に解析する.計画では先ずPDS-FEMを静的な3次元問題に拡張し,供試体内部での3次元き裂の進展挙動の再現を試みる.ビデオカメラとX線CTにより得られたき裂形状と比較し,その解析精度を検証する.次に3次元動的問題に拡張し,き裂の動的な進展挙動の再現を試みる.解析精度は実験により干渉縞として可視化された供試体中の主応力分布との比較で検討される.十分な精度を確認した後,進展き裂の停止と再進展開始条件について,数値解析結果から検討を加える.
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次年度使用額が生じた理由 |
可視化システムの光源として使用してるVerdi社製5Wのグリーン・レーザーが故障し,実験の継続が困難となった.修理費用が約40万円と高額であったため年度内には修理ができず,予定していた実験が遂行できなくなった.このため,供試体作成材料等の実験用消耗品の購入に充当する予定であった予算43,836円を次年度に繰り越すことにしたものである.
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次年度使用額の使用計画 |
レーザーの修理を行い,昨年度から繰り越しとなっている実験を遂行する.繰り越し金はその実験のための消耗品の購入に充当する予定である.尚,レーザーの修理費用は近畿大学の校費を充当する予定である.
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