【実験を用いた検討】 内部に初期欠陥を含む透明供試体の一軸圧縮試験を行い,超高速ビデオカメラを用いて初期欠陥を起点として進展する3次元wingき裂の進展状況と光弾性手法により可視化された供試体中の応力分布の画像計測を行った.供試体として透明エポキシ樹脂を用いて円筒形供試体を作成した.厚さ0.1㎜の鋼製薄板円盤を供試体中央部に固定し,初期欠陥としている.載荷装置として本助成で購入した変位制御型の圧縮試験装置を使用した.超高速ビデオカメラの撮影速度は毎秒50万枚とし,時間分解能2μ秒とした.き裂の進展開始と超高速ビデオカメラの撮影タイミングを同期させる目的で,本助成によりレーザー遮断トリガーを作成した.トリガーでは,き裂の予想進展経路上にレーザーを照射し,透過光をフォトダイオードで受光する.き裂の進展により生成されたき裂面でレーザーの透過が阻害されると,フォトダイオードでの受光量が減少する.受光量の減少を感知したトリガーが同期信号をカメラに送信する.この撮影システムにより,円弧状に進展する3次元Wingき裂の進展状況とき裂先端部近傍の応力分布を画像計測することに成功した. 【解析を用いた検討】 動的PDS-FEMに摩擦を伴う接触問題を組み合わせ,圧縮荷重下でのき裂進展の動的解析モデルを構築した.構築したモデルの精度を検証する目的で,一軸圧縮荷重下での2次元Wingき裂の進展解析を行った.解析結果を別途実施した実験により得られた画像計測結果と比較することにより,構築されたモデルが良好な精度をもつことが確認された.また解析結果から動的J積分を計算し,2次元Wingき裂の進展開始,停止,再進展といった進展挙動との関連付けを行った.その後,構築したモデルを3次元に拡張し,円筒供試体中の3次元Wingき裂進展の解析を試みたが,十分な精度を得られなかった.
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