近年、小型化が著しいQ スイッチYAG レーザの使用を前提とした、今までにない「携帯型レーザピーニング装置」を実用化するため、低パルスエネルギーでの最適な施工条件が溶接部でも適用可能か否かを明らかにする。さらに疲労強度向上効果を定量的に明らかにする。 本年度は、昨年度に引き続き、大型曲げ疲労試験体によってレーザピーニング(LPと称す)の施工範囲の影響に関する実験を行い、実験精度を上げる予定であったが、研究協力企業の都合によりLPの施工が難しくなったため、施工は小型疲労試験体に対して行い、ピーク出力10mJと20mJの場合の効果の実験データを増やし、実験精度を上げた。また、他の手法であるショットピーニング(SPと称す)とハンマーピーニング(HPと称す)の疲労寿命向上効果をLPと直接同じ試験体で比較した結果はこれまでなかったため、大型試験体でLPとSPとHPの比較を、小型試験体でLPとSPとさらにフェムト秒レーザピーニング(FLPと称す)の比較を行った。その結果、LPはピーク出力が小さい場合でも、SPやHPと同等以上の疲労強度向上効果があることが明らかになった。また、FLPは残留応力の生成深さが非常に浅いため、効果がほとんど見られなかった。 また、別予算によってX線残留応力測定装置を購入したため、LP,SP,HP,FLPによって生成される残留応力の特徴を比較するとともに、溶接部の残留応力測定におけるコリメータ径の影響や、鋼材種の影響についても検討を行い、精度の良い計測を行うためのデータを得た。 さらに、初期応力を考慮した状態でのLPによる残留応力導入効果を検証するための解析も行った。その結果、ピーニング位置における初期応力の大きさにより、導入される圧縮応力の大きさや範囲が変化する可能性があり、このことが疲労性能向上効果にも影響する可能性が考えられることが明らかとなった。
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