• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2016 年度 実施状況報告書

構造物のヘルスモニタリングにおけるデータのクラウド化による集中管理に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 26420472
研究機関北海学園大学

研究代表者

小幡 卓司  北海学園大学, 工学部, 教授 (20214215)

研究分担者 和田 健  大阪府立大学工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (00469587)
早川 潔  大阪府立大学工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (20325575)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2019-03-31
キーワード損傷同定 / 構造ヘルスモニタリングシステム / ARMプロセッサ / PCクラスタシステム / クラウド化 / 圧電素子 / データの「見える」化
研究実績の概要

昨年度は,クラウド型汎用データロギングシステムの発展型として,汎用部品で構成された PCクラスタシステムに注目し,このシステムの研究開発を実施した.PCクラスタシステムは汎用PCを利用するため,安価に構築できることから小規模な企業や研究機関などでも利用されているが,数十~数百台規模でノードを稼働させるため,運用コストが問題となる.そこで大阪府立大学高専早川研究室では,PC クラスタが設置された環境全体の消費電力に合わせて, 稼働させるノードの数を動的に制御することで電力を平準化することを目指したスマート ARM+FPGAヘテロクラスタ(SAFHC)を開発し,低消費電力で多点のデータ収集が可能となった.さらにARMプロセッサは,System on a Chip(SoC)という形態で供給されているため,従来の汎用PCではチップセットとして提供されるコンピュータの動作に必要な回路(メモリコントローラやPCIe,USB等のIO制御)が1チップ上 に実装されている.そのため安価で容易に小型のコンピュータを多数接続して構築することが可能である.
そこで,本年度は,橋梁を模した実験供試体を作成し,札幌から大阪へデータをインターネット経緯で送信し,複数の供試体に対する構造ヘルスモニタリング(SHM)を中心に研究を進める.また,クラウドに集積されたデータに対して,構造物の変状が容易に把握できるパラメータを検討した上で,ブラウザ上からリクエストすれば蓄積されたデータをユーザーが自由に選択・閲覧できるシステムを完成させる予定である.現在のところ,振動波形,パワースペクトル,相互相関関数など数種類の解析と表示について試験中であり,本年度内での完成は十分可能であると考える.さらには,災害発生時に大きな変化が生じた際には登録された携帯番号などに自動的に連絡するような機能の追加も考慮している.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は,昨年度に引き続き,損傷同定手法の開発と複数の測定点の同期を確実にし,複数の社会基盤構造物から送られてくるデータを集積して的確な解析を行って,誰でも簡単に損傷のジャッジができるシステムの開発を目指している.
現在までの進捗状況は,昨年度における圧電素子を用いた動ひずみ測定によって,圧電素子の出力波形の乱れから,ある程度の損傷同定は可能であるとの結果に基づき,加速度応答を入力,圧電素子の応答を出力と仮定し,伝達関数,相互相関関数などの計算を試みた.また,振動数の変化などの同定にしばしば用いられるARモデルやARXモデルの導入など,波形の乱れを数値化する工夫を検討した.これらによって,健全時と損傷時において相応の変化は見受けられるが,損傷の判定にはかなりの専門知識を必要とし,現状では未だ実用的ではない.しかしながら,これらで得られた健全時と損傷時の変化を,R.M.Sなどの代表値を導入することにより,損傷同定の十分な可能性を有することが判明した.
また,データ集積実験では,汎用部品で構成された PCクラスタシステムに注目し,このシステムの研究開発を中心に研究を実施することにより,汎用部品で構成された PCクラスタシステムに注目し,このシステムの研究開発を中心に研究を実施することにより,かなりの研究の進捗が見られた.詳細は紙面の関係上省略させて頂くが,実際に複数の実験供試体から,それぞれ同期が取れた圧電素子の信号をサーバーまで送ることに成功し,少なくとも同一のLAN回線内のワークグループの中では確実にデータを集積し,ビッグデータとして取り扱うことが可能になった.
以上のように,現在までの進捗状況は,当初の予定を十分に満たした状態で進行しており,これから解決すべき問題点も明らかになったことから,今後も予定通りの研究ペースが維持できるものと判断できる.

今後の研究の推進方策

今後の研究方針としては,「現在までの進捗状況」でも触れたとおり,損傷同定において,ある程度の工学的知識を有するものであれば容易に判定することが可能となる,損傷同定パラメータを決定することである.伝達関数あるいは相互相関関数によって,現状でも構造動力学の知識を有するものであれば,損傷の同定は可能だが,このようなシステムは役所や設計コンサルタントに勤務するごく普通の技術者でも扱えるものでなければ,あまり意味を持たない.すなわち,現行の橋梁点検の代替となることが可能な損傷同定システムを作り込みを行わなければ,その実用性は疑わしいものとなってしまう.そこで,今後の課題として,多くとも5個程度のパラメータ(波形のRMS値の変化量,伝達関数における変化量の閾値の設定,ARモデルなどの次数変化やパラメータそのものの変化など)を設定し,可能な限り,1つのパラメータに付き1つの数字で変化を表し,より簡便に判断が可能になる損傷同定手法の開発を実施する.
また,データ集積の方法に関しては,WiMAX2などの一般の通信回線を利用して,安価にデータ集積を行うことを検討中で,既にその準備は進行中である.従来でも,長大橋においては,加速度計の設置と専用回線により,地震時などの加速度観測やGPSを利用した位置観測が行われているが,計測機器そのものが非常に高価であり,一般的な生活道路の橋には設置が困難であった.本研究では,汎用部品で構成された PCクラスタシステムを使用するため,測定システム自体が安価であり,前述のWiMAX2を使えば,ランニングコストも抑えることが可能である.
さらに,複数の橋梁で収集され,解析されたビッグデータを,分かりやすく表示する方法についても検討が必要である.まず,表示が必要なデータを選択してWEB上で表示し,異常時には携帯に連絡するなどのシステムを追加する必要がある.

次年度使用額が生じた理由

研究代表者の一身上の都合(過去の交通事故で骨折した部位(右足首)が再度疲労骨折)のため,8月に入院手術,その後半年程度,車椅子を必要としたため,予定していた打ち合わせ出張(札幌―大阪,2回)が中止となり,研究そのものにも支障を来したため,前年度予算に未使用額が発生した.

次年度使用額の使用計画

本年度は前年度の余剰金を利用してWiMAX2通信費と専用PCの購入に充当する予定である.当初の予定では,それぞれの学校のLANを使用することを考えていたが,組織を超えて専用の通信手段をそれぞれのLANで用意することは組織上非常に困難なため,公的なプロバイダと契約することで簡単に通信環境が得られるため,WiMAX2の導入を決定した.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件)

  • [雑誌論文] モンテカルロシムレーションにおける乱数発生システムの開発2016

    • 著者名/発表者名
      山中 祐紀,吉田 晃基,早川 潔,梅本 敏孝,小幡 卓司
    • 雑誌名

      数理科学会論文集

      巻: Vol17,No.1 ページ: 15-20

    • 査読あり / 謝辞記載あり

URL: 

公開日: 2018-01-16  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi