研究課題/領域番号 |
26420479
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
小林 泰三 福井大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10380578)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 斜面崩壊 / 地盤調査 / せん断試験 / 常時微動観測 |
研究実績の概要 |
本研究では,近年多発する地盤災害の予測・防災・減災に資することを目的に,斜面崩壊の危険度や谷埋め盛土宅地等の安定性を合理的に診断し,対応策の検討に貢献することのできる地盤調査手法を構築する。具体的には,1)小口径のボアホールを対象とした孔内直接せん断試験ツールを構築するとともに,2)面的な非破壊調査手法である「常時微動観測技術」によってすべり面を推定する手法を確立する。 平成27年度には,前年度までに試作した孔内せん断試験ツールを用いて,室内土槽と野外に構築した試験盛土での実証実験を行った。その結果,開発した試験機によって一面せん断試験結果と同等の強度定数を求められることが分かった。さらに,平成25年9月に発生した福井県嶺南地域の土砂災害現場の調査を行い,崩壊斜面の土質および強度特性を調べた。ここでは,斜面の不安定化に及ぼす粘着力の低下,水圧の上昇,自重の増加の影響を分離して評価することのできる斜面安定解析手法を構築し,当該斜面の崩壊メカニズムを明らかにした。本研究で開発を進める孔内せん断試験ツールでは,ボアホールを浸水した状態で試験することで飽和状態の強度定数を求めることができる。浸水前後の強度定数の変化を調べることができるようになり,その試験結果を提案する解析手法に入力することで,斜面が崩壊する地下水位が予測できるようになる。また,地下水位の変動をモニタリングすることで,時々刻々と変化する斜面の安全率を評価することができるようになる。このように平成28年度には,斜面の危険度評価するための強度定数の計測技術とそのデータを危険度診断に使用するための解析手法を構築した。 平成28年度には,斜面の危険度診断の精度を向上させるために,常時微動観測によるすべり面の推定方法についての検討を行うとともに,本研究で開発した技術の統合化を図る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度には,模型土槽を用いた室内実験や試験盛土を行ったフィールド実験によってデータの蓄積を行い,孔内せん断試験ツールの原位置試験システムとしての有用性を検証することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度には,土砂災害警戒区域に指定されている地区を対象に,常時微動観測によるすべり面の推定に関する検討を行うとともに,開発した孔内せん断試験ツールによる現地試験データを利用した危険度診断システムを構築したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
孔内せん断試験ツールの実験に要した材料費・試料費等が安く抑えられたことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
開発する機器の材料費や実験試料費として使用する予定である。
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