本研究ではエトリンガイト生成量に着目したリサイクル材料のみの複合材料を開発し、その地盤改良材としての適用性を実証するため、種々の添加率で作製した供試体に対して地盤工学と地盤環境工学との両観点から解明している。具体的には上記新複合リサイクル材料の土試料への適用性を検討するため、種々の添加率で作製した供試体に対して一連の土質試験による強度変形特性の評価、SEMによるエトリンガイトに代表される内部構造の可視化と大きさの定量化、さらには上記供試体の凍結融解作用や乾湿繰り返し作用に対する耐久性も検討し、十分な耐久性があることも実証した。また複合リサイクル材料の添加率が砂や粘土の締固め特性に及ぼす影響も明らかし、その締固め特性と強度の関係さらには短期養生期間の影響も解明した。 一方、複合リサイクル材料の土への添加が地盤環境に及ぼす観点から溶出試験による重金属量の評価に関しては、フッ素・六価クロム・カドミウム・鉛などの重金属化合物を蒸留水に溶解させて任意の濃度に調整した模擬汚染水を複合リサイクル材料に添加混合して供試体を作製した。そして,その養生時間とこれら重金属類の溶出濃度との関係を検討し,複合リサイクル材料の重金属類の不溶化に関する地盤環境工学的有効性を実証している。 本研究で提案している複合リサイクル材料(半水石膏、石炭灰、高炉スラグ、微量の高炉セメントB種)を混入した地盤材料の力学的特性やその材料の環境へ及ぼす影響の把握およびその環境負荷低減法等の一連の研究成果は、最終処分場不足の解消や廃石膏ボード等に代表される産業廃棄物の建設材料としての再資源化に繋がることから、我が国のみならずグローバルな観点からも現代社会が解決しなければならない資源循環型の社会・産業構造を構築する上において、その社会的意義は、極めて大きいものと考えられる。
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