研究課題/領域番号 |
26420485
|
研究機関 | 東北学院大学 |
研究代表者 |
山口 晶 東北学院大学, 工学部, 教授 (30337191)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 超微粒子球状シリカ系改良材 / 一軸圧縮強さ / 移流方程式 / 浸透注入 / 懸濁型改良材 |
研究実績の概要 |
平成26年度は,超微粒子球状シリカ系改良材を用いた一次元浸透実験を行い,この実験結果を元に,原地盤に浸透注入を行った際の改良体の大きさと一軸圧縮強さを推定する方法を検討した。この結果により,土粒子の粒径,相対密度,改良材の水セメント比に応じて,実地盤に形成した改良体の大きさと一軸圧縮強さの推定方法を提案した。また,ドラム缶を用いた模擬地盤浸透注入実験を行い,推定手法と実験結果の整合性を調べた。 一次元浸透実験は,試料としてケイ砂の5号から7号の試料を用いた。異なる相対密度でアクリル管に作製した土層について,超微粒子球状シリカ系改良材の浸透注入実験を行った。注入時は,上部から排出される溶液を採取し,排出液に含まれる固形成分の質量を計測した。供試体は60日間養生後にアクリル管から切断して一軸圧縮試験を行い,注入孔からの距離と一軸圧縮強さの関係について調べた。この実験結果を元に,一次元移流方程式を用いて改良材注入時の遅延係数を求め,固形成分の吸着量の分布と一軸圧縮強さの関係を調べた。その結果,供試体中の固形成分質量と一軸圧縮強さには比例関係が見られた。この実験結果を元に,地盤に浸透注入した際に球状に形成される改良体の大きさと一軸圧縮強さを,球対称問題における移流方程式を利用して推定する方法を検討した。 次に,ケイ砂試料を用いたドラム缶を土槽として用いた浸透注入実験を行い,推定手法と実験結果の比較を行った。ドラム缶内に5号から7号のケイ砂試料で模型地盤を作製し,注入管を設置して地盤を模擬した注入実験を行った。注入後60日程度経過後に改良体を掘り出し,改良体の形状の計測と供試体の作製および一軸圧縮試験を行った。この結果と,提案した手法を用いて計算した改良体の大きさと一軸圧縮強さの比較を行った。その結果,あまり一致しているとは言い難い結果となった。今後は,推定精度の向上が課題となる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超微粒子シリカ系改良材の一次元注入実験の結果から,移流方程式を利用して遅延係数を求め,地盤に浸透注入した場合の固形成分の吸着量の分布から,改良体の大きさと一軸圧縮強さを推定する手法を提案した。また,ドラム缶を用いた模擬地盤浸透注入実験を行い,球対称の移流方程式から固形成分の吸着量を推定し,一軸圧縮強さを求める手法を提案した。さらにこの推定結果と実験結果の整合性を調べるところまでを実施した。 当初予定では,H26年度中に一次元浸透試験,H27年度でドラム缶を用いた注入実験,H28年度に実地盤に対する注入実験を行う予定であった。現在は,当初の予定が前倒しされ,H28年度実施予定であった原位置試験のデータが整理可能な状況となっている。今後は原位置試験のデータを整理し,また提案した手法から改良体の大きさと一軸圧縮強さの推定を行って,結果の比較を行う予定である。 達成度としては,当初予定を若干上回る進行状況といえる。ただし,現状では,提案した手法と模擬地盤に対する実験結果は一致しているとは言い難い状況である。データの整理方法を新たに検討し,更に精度のよい推定法を検討する予定である。また,最終的には,超微粒子球状シリカ系改良材に適用できるのみでなく,様々な懸濁型改良材についても,同様の手法により改良体の推定が可能であることを確認したい。今後は,提案手法の精度の向上と超微粒子セメントなどの懸濁型改良材への拡張を視野にいれて研究を行う予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
超微粒子球状シリカ系改良材については,ほぼ改良体の大きさと一軸圧縮強さの推定が可能な状況となっている。今後は,さらに推定結果と実験結果の整合性の向上を目指して,推定方法の改良を試みる予定である。 提案した改良体の大きさと一軸圧縮強さを推定する手法は,超微粒子球状シリカ系改良材のみにしか適用できない方法ではなく,別の懸濁型改良材,例えば超微粒子セメント等についても適用可能と考えている。今後は,超微粒子セメントを用いた一次元浸透実験,ドラム缶実験,原位置注入試験を行い,同様の手法で実地盤に形成される改良体の大きさと一軸圧縮強さが推定できるかどうか,検討を行う予定である。また,実地盤に対する懸濁型改良材の注入事例を入手し,提案手法の妥当性について,実施工との比較を試みる予定である。 また,これらの実験を通じて,最終的には懸濁型改良材について,浸透注入時の改良体の大きさと一軸圧縮強さを推定する手法を確立させたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究打ち合わせについて,時間と金額の節約を考慮して極力メールや電話等にて行った結果,旅費の使用量が計画より少なくて済んだ。物品費と人件費その他は当初予定を越えた支出であったが,旅費を節約した分で相殺できた。相殺の残額として残金が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
金額的には大きなものでないため,翌年度分の助成金と合わせて使用する予定である。 本年度は,研究補助としての人件費が予想よりも大きくなったため,人件費分として計上する予定である。
|