研究課題/領域番号 |
26420487
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
安田 進 東京電機大学, 理工学部, 教授 (90192385)
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研究分担者 |
石川 敬祐 東京電機大学, 理工学部, 助教 (00615057)
大保 直人 公益財団法人地震予知総合研究振興会, その他部局等, その他 (50107398)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 液状化 / 巨大地震 / 震動 / ライフライン / 戸建て住宅 |
研究実績の概要 |
継続時間の長さが液状化の発生に与える影響を検討するために、継続時間が特に長かった地震波として東日本大震災時に宮城県のK-NET原町で観測された波と、逆に特に短かった地震波として阪神・淡路大震災時の神戸海洋気象台と東神戸大橋で観測された波を用い、繰返しねじりせん断試験装置を用いて地震波荷重のもとでの液状化試験を行った。試料には豊浦砂を選び,それぞれ密度を2段階変えた実験を行った。その結果、液状化強度には継続時間、つまり繰返しせん断力の回数が大きく影響することや、密なほどその影響が大きいことが分かった。 このような結果は、最近2,3年で急に発生が懸念されるようになっている南海トラフ地震での液状化発生の予測にも影響すると考えられたため、研究計画の順を少し変更し、広島市で発生すると推定されている地震波によって繰返しねじりせん断試験を行った。そして、それを用いて広島市内の液状化による一般的な被害および木造家屋の被害の予測を行った。その結果、南海トラフの震源からかなり遠いにもかかわらず広い範囲で液状化による被害が生じることが予想された。 次に、東日本大震災の際に液状化後も長く揺れ続けたために発生したと考えられる揺動により、道路の突き上げ現象などの変状が発生した箇所を、写真や聞き込み調査などから特定し、その箇所の現地踏査を行って建物などの境界条件が揺動に与えた影響を調べた。また、水道管やガス導管の被害箇所と道路の変状箇所との関係を調べたところ、かなり一致することが考察された。そして、代表的な断面に対し地震応答解析を行って、表層地盤での水平方向の圧縮・引張りひずみの集中状況が、地下水面の深さによってかなり異なってくることなどを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は巨大地震の液状化の発生や構造物の被害を対象にし、(1)継続時間の長さが液状化の発生に与える影響、(2)液状化後も長く揺れ続けることが揺動現象を引き起こしてライフラインに与える影響、(3)本震で液状化したところに余震が襲ったことが戸建て住宅の被害に与える影響の3つの課題に関して研究を行うものである。そのうち(1)に関しては継続時間が大きく異なる2つの地震の際に観測された波での実験を行い、予定通りの研究成果が得られてきている。さらに、この2,3年の間に南海トラフで発生する巨大地震による被害が懸念されるようになってきたため、次年度の予定を前倒ししてこの地震で予想されている地震波でも実験を行った。そして、それを広島市に適用して液状化による構造物に与える影響の予測を行ってみた。(2)に関しては計画通り東日本大震災で揺動による道路・水道管・ガス導管の被害が発生したと考えられる箇所を抽出し、現地における境界条件などを調べた。また、地震応答解析を行って、被害に与えた要因のうちの地下水位の影響に関して検討を行った。これにより、次年度以降に研究する対策方法の一つとしての効果も分かった。(3)に関しては資料収集をしたのみであり、本年度は実際の実験や解析は行わなかった。
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今後の研究の推進方策 |
(1)継続時間の長さが液状化の発生に与える影響、(2)液状化後も長く揺れ続けることが揺動現象を引き起こしてライフラインに与える影響、(3)本震で液状化したところに余震が襲ったことが戸建て住宅の被害に与える影響の3つの課題に関して、本年度の研究成果を踏まえて計画通り研究を進めていく。さらに、巨大地震による被害の一つとして首都直下地震による被害も最近内閣府で取り上げられその地震波の推定も行われたので、急遽、この巨大地震による液状化被害も念頭において研究を進めていく。このため、(1)に関しては予定している地震波に加えて首都直下地震で推定された地震波での実験を行い、その結果をもとに東京湾岸での液状化により被害の予測も行う。そして、東日本大震災時の被害と比較して、東日本大震災時の地震動の継続時間や余震が与えた影響に関してさらなる考察を加える。
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次年度使用額が生じた理由 |
端数なので次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
実験材料の購入を予定している。
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