研究課題/領域番号 |
26420490
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研究機関 | 豊田工業高等専門学校 |
研究代表者 |
小林 睦 豊田工業高等専門学校, 環境都市工学科, 准教授 (30390462)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 補強土 / 地震 / 降雨 / 性能 |
研究実績の概要 |
一般に,補強土構造物は耐震性が高いと言われていたが,設計・施工時の不備が長期的に顕在化して,浸透した雨水を適切に排除できない状態で地震動を受けると,時に修復さえ不可能な大変形に至ることが報告されている。土構造物の設計が性能規定型に移行しつつある中で,長期的なこの種の構造物の性能を示すことは重要である。本研究では,遠心力場加振実験により,降雨浸透を受けるアンカー式補強土壁の地震時性能を検証した。この際,盛土表層から飽和領域が拡大するような時間雨量100mmの豪雨と,盛土内に浸透流が発生するような長期的降雨の2つのタイプの降雨を再現した。なお,遠心力場における浸透現象を適切に再現するために,間隙流体の粘性を調節しており,地震動は振幅2m/sec2程度,周波数1Hzの正弦波を20波与えている。豪雨タイプでは,最上部の補強材をたるみの影響を調べることとし,浸透流タイプでは,盛土の締固め密度を変化させて液状化現象の再現を試みた。これらの一連の模型実験の結果,降雨浸透を受けている補強土壁の耐震性は低くないことが改めて確認された。すなわち,相対密度75%程度でしか締め固めていない裏込め地盤が地下水を有していても,壁面の倒れが3.7%程度であった。一方で,表層から飽和度が拡大するような豪雨浸透を受ける場合は,最上部の土被り圧の小さな補強材設置層で,補強材にたるみがあると適切な補強効果を発揮できずに,変形の要因になることを指摘した。また,地下水を有する場合,裏込め地盤の締固め度が適切でなければ,地震時の過剰間隙水圧増加に伴う補強効果の低下によって,大変形に至ることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では,平成26年度は研究タイトルの準備的な研究として,遠心力場加振システムおよび計測システムの確立としていたが,前年度までの準備が順調に進み,今年度は前倒しでパラメトリックな模型実験を実施することができた。その際,補強土壁は耐震性が高いという評価の通り,実際の施工条件よりも密度が小さな裏込め地盤であっても液状化現象を観察することができなかった。このことから,模型地盤の締固め密度を現実よりさらにゆるく設定するだけで液状化現象の再現を行えたので,計画していた研究が順調に進んだ。さらに,散水シミュレーションのノウハウが効率よく活用できたことで,実験的研究が進み,対策工を施さなくても,適切な施工により地震時変形を生じさせないことが分かった。したがって,その次のフェーズである対策工の検証をクリアすることができた。以上のことから,当初の計画以上に進展している状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,当初の計画から前倒しで対策工の効果の検証を行っていく。裏込め地盤の液状化対策は,施工当初の排水工の機能維持に加えて,補強材設置位置に排水工を施してその効果を検証する。さらに,維持管理の観点から,既設構造物の排水機能向上のための排水パイプ挿入による液状化対策工の効果の検証を試みる。昨年度までに順調に研究が進んだこともあり,本年度以降は,幾つかの排水設備をモデリングしてその効果を検証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の研究が順調に進んだため,物品費が当初の予算を下回った。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度分として請求した助成金と合せて,当初想定していた以上のパラメータを設定した実験的研究を進めていく。
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