近年,地球規模での環境変動が問題となっており, IPCCは今世紀末までに海面水位が0.26~0.82 m上昇,気温が0.3~4.8 度上昇する可能性を指摘している.また,局所豪雨に伴う大洪水のような災害が世界各地で数多く報告されるなど,降水パターンの変化も指摘されている.これらの要因は二酸化炭素,メタンなどの温室効果ガスの増加である可能性が指摘されている.二酸化炭素は大気中の寿命が5~200年ほどといわれており,一方,メタンは非常に反応性が高く不安定な分子である大気中のOHラジカルと反応することで消失するため,大気中の寿命は約10年といわれている.しかし,メタンの温室効果は二酸化炭素の約25倍であるため,大気中のメタン濃度の増加に伴い温暖化が促進される可能性がある. 大気へのメタン放出源は湿地や湖沼などから放出される自然起源と水田,反芻動物やガス,石油などのエネルギー関連などから放出される人為起源の2つに分けることが出来る.この全放出量の内,自然起源である湿地および湖沼からのメタン放出量は110~240 Tg CH4 yr-1と報告されており,湿地からのメタン放出量が109 Tg CH4 yr-1,湖沼からのメタン放出量が8~48 Tg CH4 yr-1であるといわれている.しかし,閉鎖性水域内におけるメタンの生成機構は複雑であるため,定量的に生成量を明らかにした研究例は少なく,既往の研究における閉鎖性水域からの大気へのメタン放出量の推計値にはばらつきが存在する.そのため,閉鎖性水域からの放出量を推定するにはメタン生成機構を理解した上で,メタン生成量を明らかにすることが重要である.そこで本研究では,既往の研究でメタンの生成環境に影響を及ぼすと指摘されている硫酸塩およびDO濃度に着目し,底泥からのメタン発生量および好気状態におけるメタン酸化量を推定・モデル化した.
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