高層建物の後流が作り出す筋状の乱流構造が風下数km に渡り持続することがこれまでの観測及び数値実験により指摘されている.本研究では,Large Eddy Simulation を用いて高層建物がトリガーとなって生じる大規模乱流構造の性質について検討した。 これに対して一様流入条件から発達する都市大気乱流の数値計算を実施した。建物形状を陽的に表現することができる格子解像度(2m)で、境界層が十分に発達できる計算領域(19.6km x 4.6km x 1km)を確保した、大規模数値計算を実施した。都市表面を加熱した場合と非加熱の場合の計算を実施し、大気安定度が中立及び不安定の場合について検討を行った。 得られた結果より、地表面加熱条件に依らず、高層建物が筋状の大規模組織構造を作り出す傾向があるものの、その大きさは地表面条件に依らずに、境界層高度及び、水平風速シアの強さで概ね規定されることを示した。不安定な大気安定度では浮力及び水平シアによって作られる水平ロール渦が作られるものの、地表面近傍の対数則が支配的である接地境界層内では中立大気安定度と同様に、卓越する筋状乱流構造の大きさが大気境界層高度及び水平シアで規格化されることを示した。また、一様建物群の中に置かれた高層建物が作る乱流組織構造の特性(大きさ及び乱流強度)について検討を行った。以上より、高層建物は大規模乱流構造発生のトリガーとなって風下数kmに渡って影響を及ぼすものの、建物固有の特性はすぐに失われることを示した。
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