研究課題/領域番号 |
26420495
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
堀 智晴 京都大学, 防災研究所, 教授 (20190225)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 避難 / 水害 / 洪水 / シミュレーション / 危機管理 / 水防 / 災害対応 |
研究実績の概要 |
平成26年度は本研究計画の初年度として、今後3年間に構築していく水害避難行動シミュレーションシステムのサブモデル(道路ネットワークモデル、避難エージェントモデル、氾濫再現モデル)間の接続プロトコルを定義するとともに、主として障害物回避を考慮した歩行避難モデルの開発と、二次元デジタル街路ネットワークへの信号制御機能の導入を具体的な検討課題としていた。 前者については、本計画の準備期間に検討した簡略な障害物回避のアルゴリズムをより精緻化することで、追い越しに伴う回避やそれが不可能な場合に団子状の遅速歩行となる状況、対向など進路工作に伴う回避行動の再現が可能となるモデルを作成した。 後者については、代表者らが従来開発を進めて来た道路を長方形の連続体として表現する方法を発展させ、車線や車道・歩道を区別するデータ構造を定義することで、道路セグメントの接続関係の表現に適した一次元ネットワークの利点を残しつつ、街路を二次元で取り扱う機能を実現した。さらに、数値地図2500から切り出した対象地域の道路の接続状況から、交差点において信号制御のペアとなる可能性の高い直進方向の道路セグメントを自動的に選び出すモデルを開発し、多数にわたる交差点での信号制御のモデリングを支援することを可能にした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度に取り組むべき具体的な課題として、障害物回避を考慮した歩行避難モデルの開発と、二次元デジタル街路ネットワークへの信号制御機能の導入を計画していた。前者については、前方の障害物を一定の幅を保って追い越す、あるいは、所定の幅を取って追い越せない場合には追従に入る、などの簡単なルールを基本としつつ、対向する場合も含めて回避を伴う歩行行動を表現することができた。後者についても、対象となる道路空間を二次元で表現するという混雑を考慮する際に必須となる機能を実現するとともに、混雑発生に大きく影響すると考えられる信号付交差点のモデリングもほぼ完了することができた。 しかしながら、これらのモデルをより混雑が生じやすい津波来襲時の避難行動に適用し、モデル地域においてシミュレーションを実施した結果、数値地図2500の地図区画が完全に矩形でない場合があることや、対象地域を切り取った際に、周辺部にモデル上袋小路となる道路区間が現れるにもかかわらず、シミュレーションの対象としてしまうなど、従来想定していなかった不具合が存在することが判明した。これらの問題への対応に若干時間を取られたため、予定していた検討はほぼ終えられたものの、開発したソフトウエアコードの整理等一部未達成な部分が残っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の初期に、前年度開発したソフト上コードの整理を行ったうえで、平成27年度に予定している自動車行動モデルの開発に着手する。自動車の道路上での移動は、ベースとなる速度と道路面上での基本位置の取り方(車線にそって移動する)が人の移動とは異なるものの、回避行動様式は基本的に同じと考えてよい。そこで、前年度に開発した障害物回避を考慮した歩行避難モデルを拡張することで、車両避難行動モデルを構築する。特に、自動車の場合は基本となる速度が人に比べて大きいため、発進・加速過程や減速・停止過程を組み込むことが、再現性を高めるために不可欠であり、こうした機能をできるだけシンプルなルールで表現する方法を検討する。さらに、右折待ちや左折時の歩行者待ちの表現を省略した場合や、考慮した場合で結果がどの程度変わるか、表現の精粗と再現結果との関係を避難行動の再現といった視点から検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、基本的なモデル開発とコーディングの部分で、予想より多くの時間が必要になったため、対象候補となる地域の踏査のための旅費や、データやその保存システムに必要となる物件費の執行が年度当初の予定より少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
進捗状況は平成27年度には、概ね予定通りにすることができる見込みであるので、当初の目的に従って進行する予定である。
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